<<トップページ <<総論 <<1.植生からみた河川環境 〜河川植生の基礎知識〜3.横断方向の特性

 
(3)横断方向の特性
 河川の横断方向の環境特性については植生に関連づけて詳しく説明されている(奥田,1996 ;リバーフロント整備センター,1992 など)。河川の水量は常に一定ではなく、降雨の量などによって大きく変化する。そのため、水際は安定した環境とはなり得ず河川の水の増減によって頻繁に攪乱を受けるようになる。水際から堤防に向けては傾斜があるため、水際の最前線では増水量が少し増えただけでも冠水する一方、大雨の後のように数年に1 回程度しか冠水しない場所がある。このように冠水頻度は水域から陸域まで連続的に変化するため(図4)、河川特有の横断方向のエコトーン(推移帯)が形成されている。

 常に流水がある場所は水域、陸域のうち冠水頻度の高い場所は不安定帯、ほとんど冠水しない場所は安定帯、そしてその間が半安定帯と呼ばれ、河川の縦断方向に平行して帯状に発達する。改修の済んでいる河川では、不安定帯は低水敷の水際、半安定帯はそれより高位の低水敷、そして安定帯は高水敷、堤防としておおよそ認識できる。当然、改修されていない広大な低水敷には陸側に安定帯があり、自然な地形の配列がみられる。
 流水、増減水の影響を受ける横断方向の立地は連続的に環境が変化し、それに対応して植物群落が成立する。不安定帯は高頻度で攪乱を受けるため土壌の堆積も少なく植物の定着が難しい。このような不安定な立地にはヤナギタデなどの1 年生草本しか成立しない。

 一方、安定帯は攪乱が少なく土壌は発達しているためエノキやムクノキ、アキニレなどの木本種の成育が可能となる。その中間の半安定帯は冠水頻度が連続的に変化するもっとも河川の特性を現している場所であり、様々な立地を作り出している。礫原ではカワラヨモギ、カワラハハコなどが特徴的に成育するヨモギ−メドハギ群落などが成立し、湿潤な砂質の立地ではオギ群落などが特徴的に成立する。