環境編 〜ふるさとの川〜
流域の自然環境
物部川流域は、その地形的な特徴により、水源から永瀬ダム湖流入地点までの上流域、永瀬ダムから合同堰下流(国管理区間上流端)までの中流域、合同堰下流から河口域までの下流域に分けられます。
物部川流域は、太平洋岸式気候に属します。下流域の年平均気温は、17℃程度であり、一年を通して温暖な気候を示しています。また、年平均降水量は、山間部の多いところでは約3,000mmに達し、下流域に広がる平野部でも2,400mmを越える、日本でも有数の多雨地帯です。年間の降雨は、6月から9月の梅雨期と台風期に集中しています。
流域およびはん濫域を合わせた範囲の土地利用区分は、山地が約83%、平地が約17%であり、平地は主に水田や畑地に利用されています。
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物部川流域図
上流域
カモシカ |
上流域は、そのほとんどが山林であり、その約6割を人工林であるスギ、ヒノキ林が占め、残る4割が天然林の常緑広葉樹林等となっています。また、最上流域にブナ林等もみられ、この付近の一部は剣山国定公園に指定されています。 これらの山林には、国の特別天然記念物であるカモシカ等、多くの哺乳類やヤマセミやカワセミ等の鳥類、ムカシトンボ等の昆虫類の重要種も生息しています。
河道は、山間を急峻なV字谷の渓谷を形成しつつ流れ、川幅は狭く、河岸部には岩が露出しており、河床は転石とレキで覆われています。平坦地は、一部の区間で川沿いにわずかにみられる程度であり、集落が形成されています。河床勾配は約1/40と急勾配です。 水域には、アマゴ等の魚類、重要種であるオオダイガハラサンショウウオやハコネサンショウウオ、国の特別天然記念物であるオオサンショウウオ等の両生類等、清澄な水質が維持されている河川に生息する種が生息しています。また、アユ、アマゴ、ウナギが遊漁用に放流されています。 |
ヤマセミ |
中流域
オオムラサキ |
中流域は、永瀬ダム、吉野ダム、杉田ダムの湛水域が連続し、川沿いには河岸段丘が形成されています。河岸段丘上の平地は集落や農地となっており、その背後にスギ、ヒノキの人工林や常緑広葉樹林等からなる山林が広がっています。周辺の山林には、ヒヨドリ等の鳥類、イノシシ等の哺乳類が生息しています。また、アラカシ、コナラ等が生育する雑木林にはオオムラサキ等の昆虫類もみられます。しかし、薪炭の需要の減少に伴い、スギ、ヒノキ等の人工林に変化していることから、昆虫類の生息環境は減少してます。
河道は、その河床勾配が約1/145と急勾配であるものの、大半がダムの湛水域であることから、広大な水面と緩やかな流れが形成されています。 このため、水域にはオイカワ、アユ、ウグイ、アマゴ等も生息していますが、魚類や底生動物の種類数は少なく、緩やかな流れを好むコイ、カワムツが主体となっています。
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下流域
河口
アオジ
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下流域は、左岸側に河岸段丘が形成され、右岸側は扇状地性低地である香長平野が広がっています。川沿いの地域の土地利用は、一部で市街地が存在するものの、主に水田および畑地として利用されています。
河道は、川幅が40〜200m程度で、河床勾配は、約1/280と急流であり、河床材料は砂礫により構成されています。下流部のうち、統合堰上流には、堰による湛水域が形成されています。河岸部には、土砂が堆積し、ツルヨシ等の群落が形成されてレキ河原は減少しています。また、アキグミ等の低木林やアカメヤナギ、エノキ等の高木林も繁茂しており、多様な昆虫類のほか、タヌキ等の哺乳類、ホオジロ、アオジ等の鳥類が生息しています。河畔の高木林はサギ類の集団ねぐらとなっており、魚付き林としても機能しています。 水域は、カイツブリ等の水鳥の休息場となっており、魚類相は回遊魚が少なく淡
水魚が主体で、統合堰下流ではほとんどみられないカワヨシノボリ等が多く生息しています。
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物部川の水質
物部川の環境基準類型指定は、本川の日の出橋より上流および支川上韮生川はAA類型、日の出橋から河口まではA類型です。いずれの区間もほぼ環境基準(BOD75%値)を満足しており、良好な水質を維持しています。しかし、下流部では、局所的に工業排水や家庭雑排水が流入しています。一方、農業関係では一部でしろかき期に白濁水の流入もみられることから、高知県では、農業関係者にしろかき期に白濁水を防止するよう啓発等を行っています。今後とも現在の良好な水質の維持、および工場や家庭排水等からの汚濁負荷量の低減による局所的な改善に向けた取り組みが必要です。
また、高知県では「物部川清流保全計画」を策定し、「『天然アユが湧き立つ川』へ」をキャッチフレーズに、流域全体で水質保全のみならず、水量の確保や景観・生態系の保全等に向けた取り組みを目指しています。
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ふるさとの川整備河川
地域住民の物部川への関心は高く、地域一体となって河川愛護活動や川とのふれあいの体験イベント等、さまざまな取り組みが行われています。
このため、これまでに実施してきた「ふるさとの川整備事業」等の住民参加型の河川管理を継続するとともに、高知県においては、住民との協働による美しい河川環境をつくり出していくことを目的に、県管理区間において河川美化活動を行う団体に対して活動支援を実施する「高知県リバーボランティア支援事業」を推進します。また、地域住民と協力して河川管理を推進するため、地域の人々へ河川に関するさまざまな情報を発信します。
地域住民が主体となって行っているさまざまな環境保全への取り組みや河川愛護活動、貴重な自然や水辺環境とのふれあいの体験や上流域と下流域の連携等の地域社会の連携の構築のための取り組みを促進します。また、水生生物調査や河川一斉清掃等の活動については、地域の取り組みとの連携を強化します。 また、教育機関等と連携して総合学習の時間等を利用し、将来を担う子供たちの環境教育等を支援します。
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