(1)「賛成、反対」を超えた参加のしくみづくりに向けて |
これまでは、可動堰への賛成、反対という形でのやりとりになっていましたが、流域全体で多様な治水対策を考える上では、次のようなしくみが必要となります。 |
- 計画のはじめの段階から市民がかかわり、各段階で参加と合意形成のしくみが用意される。
- 市民参加を支え、育てるしくみが必要である。
- 市民の意見や提案が、きちんと集約され、計画に反映されるための第3者機関を設置する。(4章)
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(2)計画の各過程への参加のしくみを用意する |
●参加による課題の整理〜計画の方針(条件)を共有するしくみ |
- 各地区のかかえる課題や今まで評価されていない資源などを、市民参加により集約する。
例)*地区や市民団体等が、これまで課題としてあげていた問題を集約する。
*特に洪水に危機感を持っている地域の方の声を聞く。
*住民参加による、地域の課題マップ、資源マップづくりを行う。
- さまざまなテーマについて、市民が話し合う場を設ける
今までは可動堰をめぐる対立に意見が集中し、様々な意見を述べあえる場がありませんでした。
例)*市民団体等を中心に、テーマ別の公開討論会を重ね、解決策づくりに向けた課題の
共有化を図る、またそれにより広く市民の関心を高める。
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●参加による多様な案づくりと、案の受け皿となるしくみ |
例)*市町村が主体となって、地区単位の提案づくりの会(ワークショップ)を行う
*より多くの市民団体が提案づくりに取り組む |
●参加により多様な案を評価する |
例)*案発表会、評価についての公開討論会、コンペ等を行ない、様々な意見を出しあう。
*流域住民に対するアンケート、投票などで意見を集める |
●合意形成における徳島方式の模索 |
市民の評価を反映し、公共事業を最終的に誰がどのように決定するかについて、「徳島方式」と呼べるようなルールを生み出す必要があります。 |
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(3)市民参加を支え、育てるしくみ |
●行政の情報公開と適切な情報発信 |
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団体訪問では、行政の情報公開の問題が強く指摘されていました。(1章参照) |
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懇談会では、これまでは可動堰化をめぐっての様々な情報が錯綜し、何を信じていいのかわからないという状況にあったという声が多く出されました。 |
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市民が吉野川の課題を把握したり、解決策を考えたり、案を評価したりするためには、客観的でわかりやすい資料が必要で、それが適切に発信される必要があります。 |
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●多様な視点からの、参加による川の情報収集と共有化 |
例)・吉野川で遊んだ体験、大事な場所などを情報化し、ふるさとの川の意味を形にする。
*吉野川を生活の場とする漁師さん、海苔養殖業者などに川のことを聞く
*流域の洪水に対処する知恵などを調べ、活かす方法を考える |
●「川に出て考える」体験の共有化 |
例)*大雨の時の吉野川、第十堰(現堰)の合同調査
*一緒に川掃除などをしながら、川のことを考える |
●市民活動と行政のパートナーシップ(協力体制) |
具体的な連携の積み重ねの上に、川にかかわる事業での協力関係や、情報センターの共同運営のような形が、将来的には必要となります。 |
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●流域自治体・市民活動のネットワーク |
多様な解決策を具体化する上では、市民と行政のパートナーシップと同時に、流域の市町村の事業を連携させる自治体の連携、および流域住民の活動の連携が必要となります。 |
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(4)市民、行政、専門家の役割と課題 |
●市民の役割と課題 |
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ひとりひとりが川に関心を持ち、学習する |
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可動堰化計画の問題では、本当に市民一人一人が吉野川の問題をよく分かっていたのだろうか、市民参加には市民自身による学習が不可欠ではないか、という反省があります。 |
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多角的な判断力を身につける |
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これからは、行政の政策に受け身にならず、自らの努力により川にかかわる多様な視点を広げ、自分も川づくりの主体であるという意識で参加すべきだと思います。 |
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みんなで市民団体を盛りたてる |
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そのような意味でも、発意のある市民の集まりである市民団体は、これからのパートナーシップの川づくりには、重要は役割を持つものと思います。団体訪問を通じて、市民団体の中には本当によく勉強している方たちがいることを痛感しました。 |
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●行政の役割と課題 |
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計画づくりの過程では、行政は市民の声を集約し、発意を引き出す役割があります。 |
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*情報公開、適切な情報発信を行う(前述) |
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計画の目的、スケジュールなどを始めに市民に周知し、計画の各段階でもニュース等で進捗状況を市民に知らせる必要があります。 |
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*市民活動を支援する |
資金、人材、空間などの面で、市民活動の支援のしくみを用意する必要があります。 |
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●専門家の役割と課題 |
吉野川第十堰建設事業審議委員会では、専門家は行政案の妥当性を判断しただけでした。 |
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*情報を客観的に集約し、分析する
*市民による案づくりをサポートする
* 様々な視点から川を考える専門家がかかわる |
●市民と行政、流域を結ぶネットワーク組織の必要性 |
市民と行政、また流域のさまざまな組織が、一緒に吉野川について考えるためには、将来的にはそれらをつなぐような組織が必要となる。 |
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