議事1:最終提言たたき台:第2章

2001.3.10 第13回 吉野川懇談会 



第2章 問題解決の方向性
 昨年8月の与党による「白紙勧告」以降、可動堰を選択肢として残すかどうかという対立が続いています。このことに対して以下のような提言を行います。

(1)これまで話し合われていない課題を先行して検討する
 これまでは、建設省(現国土交通省)の可動堰計画の枠内で、賛成・反対の議論がされてきました。その外に、十分検討されていない課題がたくさんあります。その課題とは
  • 吉野川全体の治水計画と第十堰の位置づけ、第十堰に関する「可動堰以外」の方法
  • 河川対策だけでなく流域対策や被害軽減対策も含めた総合治水の視点
  • 市民参加の仕組みや合意形成プロセス、意思決定の仕組み
    などです。こうした課題をまず先行して検討する必要があると考えます。
(2)総合治水の視点から吉野川全体の治水計画を検討する
  • 河川審議会の中間報告(昨年12月)では、すべての河川で総合治水対策を進めるよう答申しており、吉野川についても総合治水の視点から治水計画を見直す必要があると考えられます。
  • 現計画は、上流のダム群を前提としていますが、ダム新設は困難といわれており、その意味でも河川整備計画を再検討する必要があります。
  • 堰の改築の必要性や可動堰を選択肢として残すかどうかという議論も、吉野川全体の計画と関連しており、総合治水対策と河川整備計画の検討が必要です。
(3)まず可動堰以外の検討、あるいは河川整備計画の検討から始める
 検討の手順として、二とおりが考えられます。
●手順1:第十堰の取り扱いから検討する
  • 可動堰に賛成、反対双方とも「可動堰以外の方策を検討する」ことでは共通していると考えられるので、第十堰から話し合う場合は、まず「可動堰以外の方策」を検討することを提言する。
  • 「可動堰以外の有効な方策」が出そろった段階でそれらを評価し、可動堰方式の取り扱いを検討する。
  • もし、可動堰以外に多くの流域住民が納得できる方策があり、それを優先することになれば「可動堰を選択肢に残すかどうか」は問題にならないと考えられます。
  • まず、可動堰以外に有効な方策があるかどうかを検討することが先決です。
●手順2:吉野川全体の河川整備計画から検討する
  • 第十堰の取り扱いを一旦棚上げし、改正河川法に基づく「河川整備計画」を市民参加で検討し、その上で第十堰の取り扱いを決める。
  • 計画流量が修正されたり、第十堰の上流で何らかの遊水対策がとられるなどすると、自ずと第十堰の取り扱いは変わることになる。
*「手順1」で検討する場合も、吉野川全体の治水計画と関連があり、並行して検討を進める必要があります。
*いずれにしても、「可動堰以外の有効な方策」が出そろうことが肝要であり、また、吉野川全体の治水計画との関係で議論することが不可欠です。
(4)大規模工事による「一気型」から複数の対策を積み重ねる「段階型」へ
  • これまでは、大規模工事で一気に治水安全度を上げる考え方が主流でした。
  • これは効果はあるが費用と時間がかかる、社会状況の変化に対応しにくい、完成まで効果が発揮できないという問題があります。
  • 複数の対策をできるところから、また合意できるところから積み重ねていくという方法なら、着実に安全度が上がり、社会的状況の変化にも対応しやすい。
*今、いくら議論してもわからない要素はたくさんあり、現時点で有効と思われる複数案を元に、緊急性の高いところにまず手を着けて次のステップに移るという行き方が現実的だと考えます。
(5)評価システムの確立と検討の場
  • 可動堰化計画は、主に技術的な面や治水効果などから「ベスト」と説明されてきました。
  • しかし、その他にも経済面、社会面、文化面、環境面、法制度面など、様々な評価軸があります。こうした評価軸をまず確立して総合的な評価がをする必要があります。
  • 可動堰以外の方法も、可動堰以外だったら何でもいいということではなく、複数の案がでてきたらそれを評価して選択できるようにしなければなりません。
(6)どうしたら「いい治水ができるのか」/流域全体で総合治水を
  • 今必要なことは、どうしたら「いい治水」ができるか、どうしたら治水と利水、環境のバランスをとることができるかを市民参加で話し合うことです。
(7)市民・企業・県市町村・河川管理者のパートナーシップの構築に向けて
  • 総合治水対策というのは、河川管理者、県市町村、市民、企業のそれぞれが責任を持って災害に強いまちづくりをすすめるということです。
  • 同じ町でも氾濫源に住んでいる人とそうでない人、治水のために土地を提供する人とそうでない人、上流の町と下流の町というように、それぞれ立場や利害関係が異なるということを認識した上で、お互いが協力し合う関係をつくることが必要です。
  • 上流の町は下流のためになにができるのか、下流の町は上流のためになにができるのか、氾濫源に住んでいない人は氾濫源に住んでいる人のためにどうしたらいいのか、川が万一氾濫したときに備えてどのようなことをことをしておくのかなど、みんなが知恵を出すということが重要です。