<<トップページ <<四国の河川植生解説 <<ミゾコウジュ群落・ <<前の群落 >>次の群落

ミゾコウジュ群落
低水敷 在来


識別ポイント
頻繁に冠水を受ける石礫の低水敷でミゾコウジュが群生していることで識別できる。本種は越年草(冬型一年草)であり、前年の秋に発芽した後、5月半ば頃に花を咲かせる。その後、地上部は枯れてしまうので確認には5 月までの踏査が必要である。また、ミゾコウジュは環境省により絶滅のおそれのある植物(準絶滅危惧)に指定されている。

構成種
群落高は1.5m 程度であり、ケイヌビエ、ツルヨシ、マルバヤハズソウなど石礫の河原に成育する植物がわずかに混生している。構成種数は6 種である。

成育立地の環境特性
適湿な砂礫地を好む。増水による攪乱を受けやすい立地である。

生態的機能
ミゾコウジュは冠水などの攪乱を受けた後の、適湿で明るく開けた砂礫の立地に先駆的に成育する。冬型一年草であるために成育する場所は一定せず、前述のような立地に好んで成立する。そのため、今年あった群生地は翌年にはなくなったり、突然新たな場所に群生したりすることもある。絶滅が危惧されている植物、また、春の河川を彩る花として、注意する必要がある植生、植物である。

隣接する群落
水際にツルヨシ群落、陸側にヨモギ−メドハギ群落などにつながる。

四国での分布
ミゾコウジュは多くの河川で確認されているが、群落として報告されているのは、平成5 年度の土器川での調査だけである。確認している場所は、13km 付近の祓川橋下流の低水敷である。なお、平成10 年度の調査では、ミゾコウジュの群生は確認されていない。


保全上の留意点および保全・創出に関する事柄
越年草(冬型一年草)であるため、同じ場所に継続して成育するものではない。そのため、ミゾコウジュが成立できる「過湿な開けた石礫の立地」を残しておく必要がある。増殖には5 月の終わり頃に種子を採取し、取りまきや育苗後の植栽が考えられる。また、埋土種子を期待し、群生地の周りの表層土壌を利用することも有効であろう。土器川の潮止堰上流左岸の低水敷では、工事後にミゾコウジュの成育していた表層土壌を播き戻している。現在の状況をモニタリングし、有効性を確認しておく必要があろう。

植物社会学上の位置づけ
ミゾコウジュの優占群落は報告されておらず、植物社会学的にもまとめられていない。