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エノキームクノキ群落
低〜高水敷 在来




識別ポイント
低水敷から高水敷にかけてエノキ、ムクノキなどの夏緑樹(落葉広葉樹)が優占する高木林である。高さは15m 前後の樹林が多いが、20m を超えることもある。

構成種
構成種は10 〜60 種程度と立地環境により大きな差がある。平均は30 種程度である。おもに、ヤブラン、キヅタ、ヤブニッケイ、シロダモなどのヤブツバキクラスの種で構成されている。また、ノイバラ、アケビ、スイカズラ、センニンソウなどのノイバラクラスの種の出現頻度も高く、群落が攪乱条件下にあることを示している。

成育立地の環境特性
ほとんど安定した肥沃な沖積地である。かつては自然堤防や河岸段丘外などの河川後背地になどに成立していた。本群落は、数十年に一度の洪水のような大規模な攪乱を受けることにより維持される自然植生である。また、肥沃な立地であるため耕作地として改変されてしまっている場所も多くみられる。

生態的機能
発達した樹冠は鳥類の塒になるほか、営巣にも利用される。また、ゴマダラチョウやオオムラサキの幼虫の食草となるほか、タマムシの幼虫はエノキの材を利用する。このように、生態的機能は多様であり、河川内における数少ない樹林環境としても、たいへん貴重な存在である。

隣接する群落
水辺側ではツルヨシ群落、アカメヤナギ−ジャヤナギ群落など、陸域側ではマダケ群落などの各種竹林、オギ群落などと隣接する。

四国での分布
いずれの河川においても確認されている。とくに、吉野川、肱川、重信川、仁淀川では広く分布している。


保全上の留意点
平野部においては、人間活動の結果、自然性の高い樹林はほとんど現存していない。したがって、河川内に残された本群落は、自然性の高い樹林として大変貴重な存在であり、できる限り保全することが望まれる。ただし、治水が進み、立地の攪乱頻度が減少した現状では、放置したままでは照葉樹林への遷移が進行すると考えられる。したがって、エノキ−ムクノキ群落を保全するためには、林内の照葉樹の除去など、一定の管理が必要となる。

植物社会学上の位置づけ
エノキ−ムクノキ群集、ムクノキ−エノキ群団、スダジイ−タイミンタチバナ群団、ヤブツバキクラス