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アカメヤナギージャヤナギ群落
類似群落:
ヨシノヤナギ群落

低水敷 在来




識別ポイント
低水敷の水際近くや地下水位の高い過湿な立地に発達する高木林で、アカメヤナギ、ジャヤナギなどのヤナギ科の夏緑樹(落葉広葉樹)が優占することで、識別できる。群落高は14m に達する。高木林としては、河川環境にもっとも適応した植生であり、低水敷、中州の森林の骨格をなすものである。また、ヨシノヤナギが優占することより、ヨシノヤナギ群落に位置づけられる。

構成種
構成種は数〜45 種程度と立地環境により大きな差がある。平均は25 種程度である。おもに、セリ、クサヨシ、ミゾソバ、ヤナギタデなどの湿った立地を好む種の出現頻度が高いが、ヨモギ、ヒナタイノコズチ、ノイバラなどの種も成育している。

成育立地の環境特性
水環境は「冠水する不安定地」、土壌環境は「肥沃な砂泥質土」である。洪水などの攪乱により維持される持続群落である。

生態的機能
発達した樹冠は鳥類の塒になるほか、営巣にも利用される。また、蝶類のコムラサキなどの食草となる。増水時には小動物の避難場所にもなる。このように、本群落の生態的機能は多様である。流水の影響を受ける限り持続するが、治水により攪乱頻度が低下した河川では、エノキ−ムクノキ群落へと遷移すると思われる。

隣接する群落
水辺側ではツルヨシ群落、ヨシ群落など、陸域側ではエノキ−ムクノキ群落、各種竹林などと隣接する。

四国での分布
いずれの河川においても確認されている。とくに、吉野川、肱川、仁淀川、四万十川、物部川では広範囲に分布する。なお、アカメヤナギ−ジャヤナギ群落は全河川、ヨシノヤナギ群落は肱川、那賀川、四万十川に分布する。


保全上の留意点および保全・創出に関する事項
河川内に残された本群落は、自然性の樹林環境として貴重な存在であり、治水上問題のない範囲でできる限り保全することが望まれる。なお、ヤナギ類は伐採されても再生能力が強く、数年から十年程度で高木林となる。そのため、治水上問題となる場合は、10年周期程度での伐採管理などの対応が考えられる。ヤナギに環状剥皮の処理を行えば、枯死させることができるが、ヤナギを完全になくすことは環境面から考慮すると、望ましくない。徳島工事事務所では那賀川において、ヤナギの管理手法について試験、検討を行っている。

植物社会学上の位置づけ
アカメヤナギやジャヤナギの優占する林には、アカメヤナギ−ジャヤナギ群集が報告されており、タチヤナギ群団、タチヤナギ−コモチマンネングサオーダー、オノエヤナギクラスに位置づけられている。