鮎喰橋の西南から堤防を下るとすぐ地蔵があります。立派なお堂は土手道からも見える程の高さ。中を覗くと、地蔵の膝や台座の上に、握り拳大の小さな地蔵が乗っています。それぞれに小さなよだれかけをして、一人前の目鼻立ちをしています。この小さな地蔵には、「夜泣き地蔵」の縁起がありました。
 毎晩聞こえる赤ん坊の泣き声。辺りを見回しても誰の姿もありません。泣き声を辿るうちに、それは池の水の底から聞こえるように思えてきます。翌日、池をさらうと地蔵がでてくるではありませんか。不憫に思い手厚くお祀りすると、その晩から泣き声はぴったりと止んでしまいました。
 それからこの地蔵は「夜泣き地蔵」と呼ばれるようになりました。子供に関するご利益がある、と子宝に恵まれない人が願をかけて小さな地蔵を持ち返り、抱いて眠ると不思議と子供を授かります。そしてお礼参りの時、借りた地蔵の他にもう一体小さな地蔵を返すため、今でもたくさんの可愛らしい地蔵が残っているのです。
 古くから人々の信仰を集めてきたこの地蔵の前には、今日も静かに手を合わせる老婆の姿がありました。
◎台座高 2・03m ◎全 高 3・23m