6.「共通のテーブル」で話し合うテーマ



 建設省の従来案に対するそれぞれの考え方が異なるとしても、流域住民が参加する仕組みをつくったり、多くの人が納得のいく「いい案」を探り、選択していくための方法を話し合うということについては、一致できるのではないでしょうか。
 次のことをテーマにして話し合ったらどうでしょうか。
(1)「多様な案」の前提となる計画条件を共有化する方法について話し合う
 今日の事態を招いた大きな要因は、現状認識と計画条件を共有化する取り組みが不足していたことにあります。それがないことには、多くの人が納得できる解決策を見つけることはできないでしょう。いろいろな立場の人が共有できる計画条件とは何か、それを話し合うことがとても大事です。
 現状認識を共有するための取り組み(合同調査や模型実験)、様々な意見の把握方法、治水・利水・環境(生態系、景観、親水、歴史)条件、経済的条件、社会的条件、技術的条件など、検討すべきことはたくさんあります。これらをきちんと議論して、市民合意をえることが基本になると思います。
懇談会で出た意見

計画理念を共有するために
・「多様な案」の条件として、「何を大事にするべきか」をきちんと合意しておくことが大事。
・伝統工法などを、どう評価するか/どの位置、範囲で計画を考えるか
・水害を受ける人、利害のある人の意見を聞く
・ 水防林や遊水地、避難の方法など、総合的な治水対策も含めて考える/新河川法の解釈の共有化

こんなことが「計画条件」に入るとよい
・治水(命、財産を守る)/利水(人の生活に対する影響、有効な水の使い方)
・水質(きれいな水の保全を考える)/生態系(生態系をもっと豊かに/魚道のあり方/等)
・景観(なじんだ景観を大事にする)/親水性(水に親しめる/子どもの体験学習/土手の利用/等)
・事業費(より安く、維持管理が安くて楽なもの)
・経済効果(観光名所になるなど)
・完成までの期間(できるだけ早く効果を発揮する)ある)

融和的な計画条件
・治水や利水は現状より安全度が向上していること、環境は現状より大きな改変がないこと
・治水、利水に関して心配がないようにできるなら可動堰でなくてもよい
(2)(2)比較検討するための「多様な案」を用意する方法を話し合う
 これまで、建設省の案ひとつしかなかったから、○か×かの選択になった。今後、仮にひとつの「市民案」しか出てこなかったとしたら、同じことの繰り返しになるのではないでしょうか。市民が真に求めているのは、ひとつの案に対する○か×かではなく、「何がいいか」を選択するということだと思います。
市民レベルのアイデア募集や専門家レベルの公開コンペ(設計競技)など、広く市民や専門家が参加して「多様な選択肢」を用意する方法を話し合うことが必要だと思います。
懇談会で出た意見

市民レベルのアイデア募集
・ 広く市民にアイデア募集する(専門家だけでは危ない!)
・ 市民は、景観や場所の使い方など、夢を引き出すようなものを
・ 小中学校の生徒や若い人の意見を集める
・ 市民のアイデアを専門家レベルがすくい上げる

専門家レベルのコンペ(設計競技)
・ 国内外の工学者や技術者、コンサルタントによるコンペ
・ 建設省は可動堰以外の案を出す
・吉野川の恩恵を受けている企業や利用者がアイデアを出す(水の価値を認識していただくためにも)

いいところを集めて新たなる案をつくる
・市民レベルのアイデアを募集し、それを専門家によるコンペにかけ、さらにいいところを集めて新たなる案をつくる方をするのか
(3)「多様な案」を評価・選択する仕組みについて話し合う
 これまでは市民の意見を建設省が受ける(評価する)、行政が選んだ審議委員会に意見を述べる(公聴会)という方法でした。それはうまく機能しなかったわけです。ですから、案の受け皿や評価基準、評価する人の構成などをあらかじめ市民合意の基に用意しておくことが重要です。
 懇談会では、流域住民と専門家などによる評価委員会を設けるとか、いろんな分野の専門家が客観的に評価し、住民がそれを参考に評価するような仕組みだとか、意見の異なる団体からそれぞれ同数の専門家を推薦する、すべて公開で行うなどの提案がありました。
懇談会で出た意見

案を評価する場の設定/構成
・ 流域住民と専門家による評価委員会をつくる
・ 可動堰計画に賛成、反対の立場から同数の専門家を推薦してもらう
・ 委員会は、工学的専門家、他の分野の学識者、ジャーナリスト、デザイナー、市民団体、行政機関など、分野に過不足がないように
・ 住民の委員は公選する
・ 建設省は、河川管理者として入る必要がある聞)

評価・選択の方法
・評価委員会であらかじめ評価基準を設定しておく
・案はとことん公開の場で審査する
・ 専門家によるコメント、裏付けをつけた複数案を地域住民が選択する
・ 部門別に専門家に評価してもらい、公開する
・ 最終的には住民投票?
・ 最終決定は責任のある建設省が行う?
(4)それぞれの過程に広く流域住民が参加する方法について話し合う
 私たちの懇談会では、まだ個々の参加の方法に関する議論をしている段階ですが、「計画条件を共有する」、「多様な案を用意する」、「案の評価・選択」という作業に、どのようにして幅広い市民参加を求めたらいいか、合意形成をはかるための手順や仕組みについて話し合うことが必要だと思います。
懇談会で出た意見

計画条件・案づくりへの参加
・ 流域市町村選出の代表が計画条件づくりに参画する
・ 子どもから大人まで参加できるイベント/見学会/アイデアコンペなど
・ 評価委員会での一次審査後、分類整理した案に理由を付して情報提供し、意見を聞く
・ 案づくりはプロに、チェックは流域住民

シンポジウムなどへの参加
・すべての情報をオープンに/パンフレットなどにより周知する
・地域ごとでの説明会/シンポジウム/公聴会を行ない、意見を求める
・アンケート