3. みんなでいい解決をするための新しい仕組みに向けて



 これまでの問題点をもとに、解決に向けてどのような仕組みを用意したらいいかを話し合い、次の4点にまとめてみました。
(1) 第十堰に関する団体が「共通のテーブル」で話し合うことが必要
(2) 流域全体の市民が参加できる仕組みが必要
(3) 治水・利水と環境・空間価値(風景、体験)を融合させる新しい智恵を出す
(4) 多様な選択肢を用意してみんなで考える
 問題解決への道筋は、大きく二つあると思います。多くの人が納得できる第十堰の解決方策を見つけるための仕組みを考えること。もう一つは、対立的状況を融和的方向に転換するということです。
 まず必要なことは、意見が異なる市民団体や河川管理者などが「共通のテーブル」につき、話し合うことだと思います。それは、対立的状況を固定化したままでは前進しないからです。話し合いそのものをだれも否定していないことは事実ですし、それから始めないことには前進しないことも明らかではないでしょうか。「共通のテーブル」を用意し、そこで対立的用件も含めて課題を整理し、融和的方向で共通項をひとつずつ積み重ねることが最初のステップになるのではないか。私たちはそう考えています。
 懇談会では、徳島市だけでなく他の市町村の住民や危険と隣り合わせで居住している人の意見や市町村の意見も反映すべきだという意見が出ておりますが、団体間、あるいは団体と河川管理者の話し合いだけでなく、流域全体の市民参加と合意形成の仕組みが必要だと私たちは考えています。
 河川法が改正されて「河川環境の保全と整備」が法の目的に加わりました。建設省の従来の計画に単に賛成とか反対とかの議論ではなく、治水と利水と環境をどのように融合したらいいか、その知恵を出すということが求められていると思います。
 これまでの経緯を振り返ってみると、建設省という「単一の計画者」が「ひとつの価値判断」で「ひとつの計画案」を選択したことから始まっているように思えます。しかも、計画や意思決定の過程に市民参加の仕組みが確立していなかったわけです。
 地域社会には様々な立場や価値観があります。そうした様々な立場や価値観を反映した「多様な案」が出てくるのが普通ではないでしょうか。単一の計画案は、どうしても二者択一的な対立を生みだしがちです。様々な立場や価値観をもった市民が参加して、多様な価値観を融合するような計画条件を共有し、多様な案を用意する。その中から多くの人が納得できる解決策を探り、みんなで選択していく。そういう参加の仕組みを考える必要があると思います。
●これまでの計画案づくり

単一の計画者

ひとつの価値判断

ひとつの案

賛 成

反 対
●新しい計画案づくりの提案

様々な計画者の参画

多様な価値観を反映
した共有の計画条件

多様な選択肢

良い案の選択
多様な選択肢があるということは、市民選択の段階で意見が分かれることにつながります。しかし、あらかじめ計画条件が共有(市民合意)されているならば、それは深刻な対立用件にはならないでしょう。「計画条件の共有」と各過程における「市民参加の仕組み」がとても重要です。