2. これまでに不足していたこと



 私たちは、まずこれまでのよくなかった点、不足していた点を話し合い、大きく四つの問題点としてまとめてみました。
(1) 計画をつくる各段階での情報公開や市民参加に問題があった
(2) 意見や立場が異なる市民(団体)間の話し合いが不足していた
(3) 治水・利水と環境、歴史、文化、空間の価値といった多様な価値観の論議がなかった
(4) 多様な選択肢がなかった
 今日の事態を招いた根本原因は、計画段階での市民参加が不足していたことにあると思います。情報を共有化し、共通の基盤のもとで何を目標にどのような方法を選択したらいいのか、そのことを市民参加で検討する仕組みが確立していなかったことが一番の問題だと私たちは考えています。
 もう一つは、市民間の話し合いがあります。市民参加というのは、単に行政の計画過程に市民が参加することだけを指すのではないと思います。立場や意見が異なる市民同士が話し合い、地域的な合意を形成するということがなければ、行政と市民の間の合意もまた成立しないのではないでしょうか。これまでは、市民団体と行政の関係だけが表に出ていましたが、私たちは市民(団体)間の話し合いも必要だと思います。
 治水・利水に加えて環境を目的に加えるというのは河川法改正の骨格ですから、第十堰についてもその面から再検討することが必要でしょう。と同時に、私たちは、現状に対する共通認識に大きな問題があったと考えています。現状認識を共有化する取り組みが不足していたし、また、治水に関しても真の安全とは何か、どのような方式が考えられるのかといった議論が不足していたと思います。
 そして、そもそも選択肢がひとつしかないということに問題があり、そのことが対立の大きな要因になったのではないかと考えています。