吉野川懇談会では、7月にまとめた「中間提言」について関連団体から意見を伺うことにし、第十堰の問題にかかわると思われる41団体、流域2市8町と徳島県に提言書とアンケートをお送りしました。うち8つの団体、5つの自治体から回答がありました。団体名の公開を望まない団体もいくつかあることから、ここでは団体・組織名は伏せ、内容を簡略化し、主な意見を掲載します。
 注:・(個人)=団体メンバー、自治体の担当者などの個人的な意見として回答いただきました。
    ・(『アセスの会』の提言)=「吉野川第十堰市民環境アセスメントの会」は、
      建設省に対する提言の参照を希望され、また団体名の公開も承認されたので、原文から抜粋しました。
 
「共通のテーブル」の障害となるものは?
  私たちは、第十堰の問題解決に向けて様々な立場の市民団体などが参加する「共通のテーブル」が必要と考えていますが実現しておりません。「共通のテーブル」を設ける上で何が障害になっているとお考えですか?
テーブルにつかない団体がある
可動堰反対グループの代表者は、可動堰案を撤回しない限りテーブルには着かないといっている。(中略)これが最大の障害となっているように思われる。(個人)
与党勧告の「白紙」の解釈の違い
政府与党3党の吉野川第十堰改築事業についての勧告の『白紙』という文言の解釈において、その不明瞭な表現ゆえの各団体の意識に大きな差があること。
無関心な人々が多すぎること
賛成派、反対派等言っている間は難しいと思う。吉野川に沿って住んでいる人の無関心が多すぎる様に思う。自分のことだと認識させる方法が課題だと思う。(個人)
これまでの建設省の対応
これまでの建設省の対応は不誠実であり、可動堰化を押しつけるものであった。「共通のテーブル」を言う前に、建設省の官僚的対応に対する反省が必要である。
各団体が今までの運動の歴史を守ろうとしている
第十堰改築計画で、可動堰に反対、賛成の方、それぞれが今までの運動や歴史の経過を守ろうとすることによって共通のテーブルに参加できないことであるから、一旦、今までの経緯は経緯として、まさにしきり直し、ゼロからのスタートという新しい認識を持ってテーブルに参加するという考えになっていないこと。
建設省の設定する「共通のテーブル」への不信感
過去の第十堰審議委員会の実績に照らし、建設省の設定する「共通のテーブル」が、真に市民の意見を反映しうるものであるかどうかについて、重大な疑念や不信があることが、最大の障害であると考える。
 
 
「共通のテーブル」の条件となることは?
  「共通のテーブル」を設ける上で、どのような条件を整える必要があるとお考えですか?
3者がとりあえずテーブルにつくこと
推進団体・反対団体・建設省の3者が、共通のテーブルについて話し合うことが第一である。過去の位置・工法・堰の位置などを別において、取り敢えずテーブルに着いて3者で考えてはどうか。
原点に戻り話し合える状況をつくること
促進・反対両派が白紙の立場、すなわち原点に戻り話し合える状況を作らなければならないと思います。反対・推進の信頼関係を築く事が必要です。
白紙の意味の解釈から話し合うこと
「白紙に戻す」という意味の解釈から時間をかけて話し合い、両者共お互いにこの堰改築の案が発生した以前のゼロから話せば良いと思われる。(個人)
白紙の解釈を可動堰化計画を除くものとすること
(与党勧告の)解釈は可動堰化計画を除く白紙状態でなければならない。何故なら、徳島市の住民投票の結果は、民意の大集であり、その後の衆議院議員選挙においても、対岸の藍住町のみならず、北島・鳴門でも可動堰反対を訴えた民意の票が多数を占めたことに表れているからである。
真に市民の意見を反映しうるシステムを設置する
共通のテーブルを建設省(本省)が公認する
共通のテーブルの結論を建設省が遵守する
共通のテーブルの権限と政策決定へかかわりを明確に
「共通のテーブル」が、単に「市民・県民のサロン」であってはならない。この「テーブル」にどのような権限が与えられ、建設省の政策決定にどのように生かされるのかが明確にされなければ、何の役にも立たない。
現堰の現状を把握すること
改築が必要な現堰の老朽化の度合い(具体的な劣化の状況、今後必要な手当等)について徹底的に調査・解明し、公表することが出発点ではないか。(個人)
吉野川懇談会の設立趣旨を充分理解してもらい、無条件の参加を呼び掛けるべきである。
共通のテーブルの運営については、公正、公平が必要でありこれが整えば参加をしたい。
 
 
「共通のテーブル」の構成は?
  私たちは、「共通のテーブル」は異なる意見が公正に反映されるようバランスのとれた構成が大事だと思います。「共通のテーブル」をつくることになった場合、どのような構成を考えるべきだと思いますか?
中立・公正な第三者に検討してもらう
「中立・公正な第三者」と「賛成、反対各派から選出した良識者」で構成する
先ずリードする運営チームには中立、公正な専門家を含む有識第三者(政治家、行政官は避ける)を両派合意の上結成する(人数は5名〜7名)
可動堰の賛成派、反対派からそれぞれバランスのとれた良識者を各派の専任権で選出する(人数は各派それぞれ5名〜7名程度。この選出には相手に対し、異議は唱えない)(個人)
治水・利水・環境・行政・専門家等、水に関わる全ての団体により構成すべき。
様々な人をバランスよく配置する
改築事業に賛成、反対する団体、中立団体、直接利害関係のある団体や住民、流域の住民などをバランスよく配置する。
中立的な団体の推薦者の会が検討会メンバーを選任 (「アセスの会」の提言より抜粋)
運営委員会・・・検討会メンバー選任機関として設置します。また検討会運営のサポート役を運営委員会に当たらせることにしたいと考えます。中立で公正な合意形成の担保を確保しうる団体を選出母体に定め、そうした団体からの推薦により選任します。建設省に委員個人を特定して選任させるのではなく、建設省は委員の推薦団体のみを選定し、委員個人は当該団体が推薦し、その推薦されたものを建設省が選任するという方法です。中立で公正な合意形成の担保を確保しうる団体とは、運営委員会が検討会のあり方に大きな影響を与えることから、市民参加による政策決定のあり方などを研究対象としている国際影響評価学会のような学会や弁護士会など、中立公正な立場で、政策決定手続きに真に市民参加を実現しうるよう検討会をサポートしうる会員を擁するような団体を念頭においています。(員数5名程度)
検討会・・・検討会メンバーは、次のような点を考慮して、メンバー構成ができるだけ広く様々な意見を代表する結果となるよう留意して選任する必要があると思います。
(年齢・性別・職業・教育制度・意見の相違・立場(地域性及び社会性)の相違)(員数15名程度)
 
 
「共通のテーブル」の運営方法は?
  私たちは、「共通のテーブル」は中立・公正な第三者による運営が望ましいと考えておりますが、どのような運営方法が必要だとお考えですか?
中立・公正な第三者に検討してもらう
中立で公正な第三者の考えによるもの。
運営は公正中立な第三者が望ましい。専門家や行政(建設省や県など)は、サポート機関とする。
中立の立場のものが運営する
過去の審議会等を反省し、反対、賛成、中立等の第三者による運営が望ましいと考える。対話を前提にし、中立の立場のものが運営するのが良い。
公正、公平な運営が必要である
吉野川懇談会が運営する
中立・公正な第三者による運営は必要条件であると思われるが、実際に選定するのは非常に困難と思われる。現懇談会の今までの討議過程を伺うにつけ、懇談会で主催していただくのがベストではないか。(個人)
運営については中立の立場で推進反対の双方より意見を聞いている吉野川懇談会が当たればよい。(個人)
建設省からの独立性を確保する
検討会運営の建設省から独立して活動できるためには事務局の位置付けが重要である。所掌事務は、検討会の独立性保証のため、純粋に事務処理事項のみを処理し意思決定にはかかわらない。(「アセスの会」の提言より抜粋)
情報公開/市民の声を汲み上げる/市民と意見交換
(専門的な評価や説明など)大多数の県民が理解できるようなものにしなければならない。(個人)
中立・公正な第三者による運営はもちろんですが、常に公開し、「テーブル」参加者以外の住民の意見も汲み上げる工夫が必要でしょう。結論を得るためには、場合によっては「住民投票」を行う必要があるケースも出てくると思います。
検討会は市民の意見状況を正確に把握するため、市民との間で、様々な提案を受け付け、頻繁に意見交換し、意見のフィードバックする必要があると思われ、そのための仕組みが完備されていなければならない。頻繁な意見交換や意見聴取、意見分布の調査のためには、検討会における情報の完全な公開が不可欠。(「アセスの会」の提言より抜粋)
構成、運営は建設省が事前に諸団体の同意を得る
もし「共通のテーブル」を設置するとすれば、 1.「審議委員会」の何が問題であったのかを、先ず建設省が反省し見解を明らかにすること。
2.その上で、審議委員会に代る新たな「委員会」の設置方針を明らかにすること。ただし、委員の公正な選任方法の提示、委員会の完全公開、資料の全面公開、多様な公聴会の開催など、「委員会」の構成運営方針について事前に関係諸団体に示し、同意を得ること。
 
 
「共通のテーブル」で話し合うテーマは?
  中間提言では、4つのテーマを考えました。貴団体が考える「話し合いのテーマ」についてお聞かせください。
税金の使われ方について話し合う
税金のムダ遣いと言う人が沢山いると報道される。では現実に県民1人当たりが納めている税額はいくらで事業実施した場合どう変わるか(略)。多くの人は漠然とした「ムダ使い」や「環境破壊」という言葉につられている様に思う。(個人)
計画の各段階での参加の方法について話し合う
中間提言の4テーマはそのとおりと思います。(個人)
貴「中間提言」にある4テーマについては、説明の細かい点は後記の様に異論がありますが、大筋ではいいと思います。
話し合いの対象は公共事業決定の全ての段階(事業目的・必要性判断、政策決定、プログラム・計画決定、具体的事業決定/フロー図より)のすべての段階でなければならず、とりわけ事業の目的・必要性の段階から検討判断のテーマとされなければなりません。(「アセスの会」の提言より抜粋)
多様な案そのものについて話し合う
賛成、反対の双方が討論する「たたき台」案は両派が夫々持ち寄った案か又は全国に公募(設計コンペ)して運営チームの選んだ両派同数の案について、1つ1つ時間をかけて平和的かつ紳士的に討論する。時間をかけて討論された案は、それぞれ複数の案に絞り、国又は世界的有名な河川管理者の大家にその裁定を委ねる(両派合意の上の人)。結果については一切クレームを着けないことは事前に約束しておく。(個人)
話し合いのテーマは、「可動堰ありき」でなく、「何がいいか」多種多様な意見や案を出し合い、共通の場で話し合い、住民合意の改築案をできるだけ早急に生み出してもらいたい。
利水者の立場で言えば、堰が壊れると死活問題。その点を十分留意して話し合ってもらいたい。(個人)
現状認識を共有し、広域住民の安全を第一として防災上の視点から早く話し合っていただく。