タイトル
昭和29年のジューン台風
紹介日
洪水体験集より
投稿者
板東正和さん
(昭和29年のジューン台風)
当時、私は建設省吉野川工事事務所に勤めていた。25歳だった。
吉野川の水位を観るために、万代町の工事事務所を出発して、吉野川橋(古川橋)を渡り、北岸の堤防上の道路を車で上流に急いだ。第十樋門を通り越して六条渡し(現在の六条橋北口付近)にさしかかった頃、運転手が「堤防道路がくねるように動くので、ハンドルを取られる」という。やむなく少し広いところに車を止めて、車から降りた。
六条地先では、堤防の裏側の法面や法尻の各所から泥水が噴き出し、早鐘の中、地元の水防団の人たちが大勢出動して、必死に水防活動をしていた。堤防沿いの藁葺きの民家の床下からは、泥水が噴き出し、みんなが見守るうちに家が大きく傾いていった。その時の状況は40年あまり経った今でも忘れることができない。
泥水が井戸から噴き出している様子
(昭和29年)