1.「中間提言」の内容
中間提言では、これまでの問題点を以下のように整理し、解決への糸口として、「共通のテーブル」を設け、そこで、市民参加の仕組みを検討することを提案しました。
■これまで不足していたこと
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計画をつくる各段階での情報公開や市民参加に問題があった |
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意見や立場が異なる市民(団体)間の話し合いが不足していた |
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治水・利水と環境、歴史、文化、空間の価値といった多様な価値観の議論がなかった |
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多様な選択肢がなかった |
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■新しい仕組みに向けて
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第十堰に関する団体が「共通のテーブル」で話し合うことが必要 |
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流域全体の市民が参加できる仕組みが必要治水、利水と環境(風景や体験など)を融合させる新しい知恵を出す |
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多様な選択肢を用意しみんなで考える |
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■「共通のテーブル」の提案
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問題解決を図るために、可動堰化計画について意見が異なる団体代表や河川管理者などが参加した「共通のテーブル」を設ける |
■「共通のテーブル」で話し合うテーマ
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「多様な案」の前提となる計画条件を共有化する方法について話し合う |
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「多様な案」を用意し、評価・選択する仕組みについて話し合う |
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それぞれの過程に広く流域住民が参加する方法について話し合う |
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第十堰問題では、計画をつくる過程に市民参加がなかったことと、可動堰化計画という「ひとつの選択肢」しかなかったことに対立の要因があると考えて、「多様な選択肢」を用意する方向で市民参加と合意形成の仕組みを検討することを提案しました。

2.「中間提言」以降の取り組み
懇談会では、「中間提言」を第十堰に係わる市民団体や行政機関(42の団体・機関)にお送りし、「中間提言」への意見をいただくことをお願いしました。また、「かわら版」(懇談会の広報誌)につけたアンケート調査も行ってきました。その結果、団体アンケートへの回答は13通、はがきアンケートは41通いただきました。団体訪問については、2月までに17の団体・行政機関(1団体は個人対応)が対応してくださいました。この間、昨年8月、与党による「白紙勧告」があり、状況が大きく変化しました。いただいた主な意見は、以下のようなものでした。
■与党の白紙勧告をめぐって
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可動堰化計画を明確に白紙撤回すべき |
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可動堰も含めた白紙からの議論 |
■白紙のスタートライン
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事業の目的や必要性の判断から問い直すべき |
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改築の方法をめぐって意見が分かれた。議論の前まで戻り早く改築したい(改築前提) |
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■「共通のテーブル」の条件
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可動堰がちらつくところには寄っていけない |
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住民投票結果を持ち出されては参加できない |
■「共通のテーブル」の運営
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現状ではテーブルに着いても互いに主張し合うだけ |
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テーブルのレフリーはどう考えているか。みんなが認める運営者でないと難しい |
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このように、「白紙勧告」の中身をめぐって見解の違いがあり、そのことの整理がつかないと「共通のテーブル」につけないことや、「共通のテーブル」の運営の枠組みを示すことが必要だということがわかりました。
さらに、「建設省は疑問に答えていない」「可動堰をまた持ち出すのではないか」など、建設省(現国土交通省)や吉野川第十堰建設事業審議委員会(以下、審議委員会)への根強い不信がありました。可動堰化計画を前提とした「説明」や「対話」が事態をこじらせた要因だといえます。理由を明示せずに「計画妥当」の答申をだした審議委員会も、説明責任を果たしたとはいえないと思います。
3. 対立を解消し、新しい仕組みづくりに向けて
「白紙勧告」以降、「可動堰を選択肢として残す/残さない」という対立的な状況が続いています。これは、従来の「可動堰に賛成/反対」という対立構造の延長線上にあります。
建設省(現国土交通省)が、市民参加の機会を設けずに可動堰化計画を策定し、そのために、「可動堰に賛成/反対」という二者択一的な対立構造が生まれました。
ここから言えることは、まず、計画を決める前の段階に戻すことです。そして、計画をつくる過程に市民参加を組み込むこと、ひとつの選択肢ではなく多様な選択肢を用意すること、市民意見を反映した計画をつくること。これが、基本課題です。
計画を決める前の段階に戻って市民参加で議論するとして、問題はどのような検討課題のもとに話し合うかということです。「最終提言」では、第2章で、「計画ありき」によって除外され、話し合われてこなかった課題を優先して検討することを提案しています。
しかし、それだけでは十分でありません。先に進むには、次のような課題があります。
●計画をつくる各過程にどのような市民参加の仕組みを用意するのか
●たくさんの市民の意見を持ち込みまとめていく「検討の場」をどうするのか
●それを市民全体で討論し市民全体の意見として確認する方法はどうするのか
●流域市町村ごとに意見が異なった場合は、どのように調整するのか
●確認された市民の意見を意思決定に反映させるにはどうしたらいいか
これらの課題は、「可動堰を選択肢として残す/残さない」の議論をするにしても同じです。
問題は、「計画に市民意見が反映されていない」というところから始まっているのですから、「市民意見を反映するための新しい仕組み」を市民の側から提案していくことが重要だと思います。
これまでの対立的議論の枠組みをそろそろ切り替えて、市民の側からの創造的な議論を開始する必要があると考えます。賛成・反対の枠組みを越えて、市民と市民、団体と団体、市民と行政が協力して問題の解決を考えることが重要です(第3章/第4章)。
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