議事3:市民参加の進め方(その2)

2001.2.24 第12回 吉野川懇談会 


1.計画策定への市民参加
前ページの表の各ステージについて、どのように市民の声や情報を引きだし、計画づくりに反映させ、合意形成を進めるべきかを想定してみました。

●ステージ1 計画の方向性の合意形成

ここでは、治水問題解決のための多様な案の可能性を探り、治水対策にかかわる方向性と、それにかかわる市民参加の進め方についての合意形成を目標とします。

【市民提案、市民意見の収集】
中立機関は、市民参加による「流域の多様な治水対策案」と「市民参加のしくみ案」をまとめるために、以下のような方法で提案にかかわる情報や流域住民の声を把握する。
  • 治水にかかわる流域住民の意見や提案を受け入れる
    広報などを通じ、「方向性の提案づくり」の目的等を周知すると共に、「治水にかかわる多様な提案」についての意見を寄せていただくよう広く流域に投げかける。
  • 今後の進め方に対する市民団体等の意見の収集・整理
    検討会、訪問、座談会などを通して、ご意見を伺う。
    *第十堰(現堰)に関する多様な視点からの評価方法についても意見を整理する。
  • 市民提案の受け皿

【提案のまとめ〜市民の合意形成】
中立機関は、上記の情報を整理し、独自の提言の骨子をつくり、流域住民に広く意見を求めていく必要がある。これを通して、行政の治水計画づくりへの合意形成と広い理解を進める。
  • オープンに、提案の内容を議論できる場の設置(公開討論会、等)
    団体案などを整理する中で課題を抽出し、いくつかのテーマに分けて、それについて意見のある団体等が中心になり公開討論会等を積み上げ、提言に結び付ける。その準備やまとめを通して、市民中心のフォーラム等が生まれるとよい。 
    ここには行政も参加し、情報を公開し、一緒に話し合う。
(懇談会で出されたテーマの例)
アカメヤナギが持っている新しい生態系の仕組みと防災上の問題/水害防備林(竹林)が管理されていない問題/市民の素朴な疑問について学習/現堰の安全性/水源地から河口までの自然や歴史/水利用、水運、交通(渡し)/洪水、水害、改修工事等のの歴史/農業、林業、漁業、その他の産業とのかかわり/水防竹林、河岸林、中州/ダム、堰について/分水について /利水について/気象、雨量、流量、洪水危険水位について/河川事業計画について
  • 中立機関の提案についての流域住民の意見収集
    中立機関は、提案の骨子がまとまった時点で、それを広報、、マスコミ等で流域住民に公開する。
    また郵便、ファックス、メールなどの手段で意見を受け付け、公開する。

●ステージ2 「総合治水の構想」の策定

この段階での市民参加は、ステージ1で合意された内容で進めるべきであるが、ここでは「総合治水の構想」づくりへの参加を想定して、進め方を例示する。

【市民提案、市民意見の収集】
  • 住民参加による地域ごとの情報収集?治水対策づくり(流域ワークショップ)
    流域の各地区で、住民の方の声をまとめる会を開く。
    治水にかかわる課題だけでなく、自然資源、歴史資源、子供の遊び、思い出などを地図にまとめつつ、川づくりの提案を出していただく。これは、多くの人が参加できるワークショップ方式が望ましい。(提言では「ワークショップ方式」の簡単な解説を入れる)
  • テーマ別市民検討部会(フォーラム)
    ステージ1の公開討論会などの運営メンバーなどが中心となり、市民主体のテーマ別検討部会(フォーラム)のようなものが運営できるとよい。
  • 市民提案の受け皿

【提案のまとめ〜市民の合意形成】
中立機関は、上記の情報を整理し、「有効な複数案」を、市民が比較検討できる形でまとめる。
また可動堰案、現堰の多様な視点からの評価のまとめを共に提示し、第十堰の扱いにかかわる市民の合意形成を図る。
  • オープンに、「多様な案」について討論.評価できる場の設置 
     
    流域の総合な治水対策を、多様な案を比較しながら考え合意をまとめる場を設置する。
(懇談会で出された評価の方法)
・公開シンポジウムを各地で開催する
・公開コンペ的な評価の場 
  • 第十堰の扱いについての市民合意をまとめる
    多様な案による流域計画の中での位置づけ、現堰についての評価などを提示し、流域の市民がそれについて考え、意思表示のできる方法を考える必要がある。
    *第十堰の多様な視点からの評価について、市民参加で調査、議論を重ね、意見をまとめておく。
(懇談会で出された評価の方法)
・流域全体に対するアンケートによる意向調査
・流域全体での住民投票

流域ワークショップについて懇談会で出されたイメージ
 流域の自治体にそれぞれ「参加のテーブル」を設け、定期的に検討会を持つ。(ワークショップ)それぞれの意見をまとめてもらい、全体の話し合いのテーブルに着いてもらって、話し合う。県は「話し合いのテーブル」を運営し、全体のリーダーシップをとる。河川管理者は「話し合いのテーブル」のオブザーバーとして関わる運営については、マニュアルも必要だし、ルールも必要だし、プロに任せるのが適当。テーマは、治水とか環境とか利水とか歴史、そういう具体的なテーマから入っていく。建設省、県、市町村の役割分担を明確にする。(第9回懇談会/グループ討議)

●ステージ3 「総合治水の構想」に基く段快適な事業の実施

この段階での流域住民の参加は、次の二つの形が想定できる。
 ・総合治水計画の段階的な実現の検討への参加
 ・個別事業の実施段階での参加

■総合治水計画の段階的な実現の検討への参加
  • 流域計画にかかわる流域住民の意見収集
    行政は、総合治水計画の更新、個別の事業計画について常に流域住民に広報し、意見を受け入れる必要がある。
  • 自立的な「市民の流域ネットワーク」的組織への期待〜自主的活動の発展
    ステージ3の段階では、市民団体や、それまでの過程で生まれた流域住民のネットワークが中心となって、自立的な「市民ネットワーク」的なものが生まれることを期待したい。
     そこが中心となり、行政の計画に対し、様々な視点から提案がなされたり、行政の事業案を評価することができるとよい。また、市民団体や企業等が主体となって行なう事業について、流域の視点から企画コーディネイトを担う組織として発展することを期待したい。

■個別事業の実施段階での参加
  • 実施計画策定への参加〜住民の主体的活動
    個別の事業実施に関しても、情報収集、提案にかかわる参加が行なわれる必要がある。
    具体的なデザインや環境保全についての住民の意思の反映、合意形成を丁寧に行なうことを通して、将来に渡り施設の維持管理、生物の育成、活用などについて市民が担い手となっていくことが期待できる。
  • 地区が主体となる活動への期待
    総合治水計画には、公共事業だけでなく、地区が主体となる活動も盛り込まれると思われる。
    それについては、地区の住民組織等が主体となり行政と協力体制を組んで活動を進める。
    (活動例)
    ・河畔林、竹林の維持管理
    ・地区の防災路設定

2.参加による川の情報集め〜情報センター設立

市民参加で川や流域計画を進めるためには、個々人の中で流域全体のイメージやそこにある課題や資源への認識を広げること、そのような情報を流域の多くの住民や自治体が共有することが最も基本的で重要なことです。それがあって、はじめて提案づくりや、案に対する適切な評価が可能になると言えます。情報の中味も行政や専門家の作成したデータだけでなく、流域住民の知識や経験、発見活動などを通して集められた、吉野川へ想いのこめられた生きた情報を集めることで、計画が豊かにふくらんでいきます。
そのような地域情報の収集過程や発信を通して、多くの流域住民の興味、アイデア、活動を引き出し、流域の人のつながりが生まれることが期待できます。また、計画に多くの流域住民の想いや発意を反映させることが可能となります。
以上のような視点からの情報の掘り起こし、整理、発信の取り組みを、行政、市民団体、地域活動が連動して進めていく取り組みを、できるところから進めるべきです。同時に行政は、その情報を川づくりの計画策定の各段階で反映させていくことが大事です。
  • 市民団体などの調査による情報収集、整理
    市民活動、地域活動などで積み上げられた吉野川にかかわる情報を、活用できる形に収集、整理していく。
  • 川の資源・問題マップづくり
    流域の各地区、市民団体、地域の学校等が中心となり、川にかかわる環境や人的資源、課題を掘り出してマップ等に整理する。そのように集められた各地のマップを、ひとつにまとめて、誰でもが見られる形にして提供していく。
    それにより川にかかわる空間的な情報を多くの人が共有し、吉野川全体や小流域単位?吉野川流域全体で川づくりを考えていく人の輪が広がっていくとよい。
  • NPOによる情報センターの設立(仮称/吉野川情報センター)
     当面は、行政がこのような活動を推進する必要があるが、将来的には市民団体や流域活動団体が主体となって、NPOによる情報センターが立ち上がるのが理想である。情報の収集・発信をベースにしながら、吉野川の住民活動を豊かにしていく様々な活動のネットワークの拠点としても機能していくことが期待できる。
    (活動例)
    ・行政側の情報を中立的な視点で整理、発信する
    ・市民活動、地区での取り組みなどで得られた川の情報を整理、発信する
    ・地区や学校、市民団体の、川の発見?提案活動、実践活動を支援する。
    ・吉野川にかかわる団体等の情報のネットワークの核となる。

3.流域住民と行政の協働による川づくりにむけて 

  • 行政による情報公開、適切な情報発信
    行政はこれまで、第十堰にかかわる情報については「可動堰案の説明」という形で発信していたが、今後は市民が様々な角度から判断したり提案づくりができるできるような素材としての客観的なデータを積極的に提示すべきである。
  • 川にかかわる市民活動の支援〜NPOとの協働事業
    これまでの公共事業は、行政が案を提示した時点で市民団体が反対をする、または提案を出すということが多く、市民団体をパートナーとしては認め難い構造があった。
    しかし、市民参加での環境調査、提案づくりからはじめる計画づくりでは、市民団体は流域住民の意見を反映させるための重要な組織である。また、ゆくゆくは事業を担い合うパートナーとしても期待できる。
    そのような川にかかわる市民活動を支援する方策を、今後の中間機関による市民団体への意見収集の中で集約すべきであるが、例として考えられるものを以下にあげておきたい。
    (支援の例)
    ・川づくりにかかわる活動に対して、中立的な審査を経て、活動資金の助成を行なう。
    ・必要により、専門家の派遣を行なう。
    ・川づくりにかかわる市民参加事業等について、できる範囲で市民によるNPO法人などに委託する。
  • 川にかかわる市民ネットワークづくり支援
    川や流域にかかわるさまざまな取り組みが増えてくると、情報交換の機会が必要となるが、行政はそれをとりまとめるのではなく、自主的なネットワークづくりがしやすくなるような手助けを行うべきである。そのためには、まずはサロンのような空間の提供のようなことが考えられる。
    そこで互いのイベントなどの情報交換や、学習会などを積み上げる中で、流域全体の水質調査や一斉ゴミ調査などの連携活動が生まれることが期待できる。
    行政がかかわってそのような場を持つことで、行政職員も参加しやすくなり、自然な交流や相互理解の機会が増えていくとよい。