別紙−3
 

 日頃は大変お世話になっております。「第十堰の応急処置についての計画(原案)」について意見を述べさせていただきます。

1. 箇所@に関して
 @の箇所は魚道から遡上した鮎など魚類が休息する場所に隣接します。この付近は魚道への流水の移動により流れが生じており、魚道部周りの捨て石では鮎などの摂餌跡が石表面に残っています。
 今回応急的に工事を行う場所は、この魚道周りの捨て石に連続する場所であり、鮎の餌場であることから、工法としては巨石(2t以上)による捨て石が望ましいと考えます。袋詰め玉石は表面を網が覆うため、鮎などが摂餌することができません。また景観的にも当箇所は土砂堆積が起きない場所であることから、袋詰め玉石が常にむき出し状態になり見苦しいものとなることが予想されます。
 当会としては、流速の大きい箇所には捨て石工法を用い、逆に流速が小さく土砂の堆積が期待できるところに袋詰め玉石を用いて頂きたいと考えます。袋詰め玉石を用いる場合、できるだけ土砂の堆積が促進されるよう水制工の設置や柳の挿し木による覆いも併せて検討して下さい。
 したがって、今回の工事箇所では捨て石による応急処置を行って頂きますようにお願いします。もし、捨て石による応急処置が採用できないのであれば、袋詰め玉石の環境影響(生物の利用)や土砂の堆積、目詰まり、植物の繁茂などについてモニタリングを行い、今後の袋詰め玉石利用に当たっての資料を作成して頂きますようお願いします。

2. 箇所Aに関して
 この部分の損耗はコンクリートの品質が悪いこと等が原因で、10年以上も前から発生しており、洪水ごとにその損傷程度が大きくなっていったことを、当会は確認しています。一方、周囲は比較的安定した練り石組やコンクリート構造となっていることから、その部分を補修すれば当分の間、対策の必要はないと考えます。
 補修に当たっては、市民の第十堰への思いを大切にし、自然環境や歴史景観への配慮をおこなって頂きますようお願いします。今回の補修は応急処置ということになっていますが、たとえ短期間であっても自然環境への配慮は必要と考えます。また、今回の応急処置部分が長期間効用を果たし、結果として恒久対策となることも想定する必要があります。
 当会としては、自然環境等に配慮した工事方法として以下の3案を検討して頂きますようお願いします。
 @伝統的な石組みによる補修(図1参照)
  上堰に残るような空石積みで補修することにより、歴史的景観になじむと同時に空石組みであることから、
 越流時に流れが緩くなること、空隙が多いことから魚類などの遡上が容易となるという効果が期待できます。
 第十堰の補修として最も住民から希望の多い工事方法であり、第一に採用して頂きたいと考えます。
図1 空石張りによる補修
図1 空石張りによる補修

 A練石張による補修(図2参照)
  伝統的な石組みが不可能な場合には練石張による方法を採用することもやむを得ないと考えております。た
 だし、石の高さに変化をつけること、深目地とすることを条件とします。コンクリートが見えるようであれ
 ば、景観的にも劣ることになり、さらには隙間や窪地が無くなれば魚類などの遡上が困難となります。
図2 練り石張による補修
図2 練り石張による補修

 B魚窪地を有する粗石(植石)コンクリート張り(図3参照)
  伝統工法である空石張や練石張での補修が困難である場合、コンクリート張りということになりますが、こ
 れは最後の手段ということになります。仮にコンクリート張りになったとしても、粗石(丸みを持った大石に
 よる植石)の設置は最低限行うようにして下さい。この際、粗石の下流側にはコンクリートを固まらないうち
 に彫り込み窪地を設けること、また設置間隔は既存の突起コンクリートより広くしないようにして下さい。こ
 の方法は粗石付き斜路工(魚道)として他県において実績があり、粗石の設置により流速を弱め、粗石下流に
 設けた窪地は魚類の休憩場所となるものです。
図3 粗石付きコンクリート張りによる補修
図3 粗石付きコンクリート張りによる補修

 以上、3案の補修方法を考えましたが、当会としては@案かA案を採用して頂きますようお願いします。また、補修範囲は品質の悪い突起付きコンクリート張り部分については全面的に補修を行って頂くようお願いします。ただし、コンクリート張りとなる場合には、最低限の補修に止めて下さい。
 また、補修方法の決定理由についても公表してください。

3.上堰に関する応急処置(緊急)
 上堰に関しては、ヤナギ等の樹木の刈り取りを市民参加でおこなって頂くようになり、心から感謝しております。しかしながら、上堰の青石組みは平成16年の度重なる出水により、急激に破損が進行しました。六条大橋周辺中州の固定化によって洪水流の流れが変わってきているため、このまま放置すると今年の増水期には大規模な崩壊が心配されます。
 もし大規模な崩壊が発生すれば原型復旧はきわめて困難となります。
 上堰の青石組みは、全国に2つとない貴重な歴史的建造物であり、地域住民にとっては253年間の第十堰の記憶が残るかけがえのないものであります。また上堰は、旧吉野川への分水に必要な水位を維持するという重要な役割を持っています。もし、大規模な損壊が起きれば、下堰右岸の堰高が低いため、渇水時には旧吉野川への分水が困難になることが予想されます。
 以上の理由により、緊急に、上堰青石組みの破損箇所の拡大を防ぐための応急処置を施していただきますようお願い致します。