日下川について
日下川は、仁淀川河口より14.2km付近で合流する右支川で、流域面積38.0km2、幹川流路延長11.7kmの一級河川です。沿川の平野は、波介川、宇治川と同様に、本川から離れるほど地盤が低くなる「低奥型地形」となっており、洪水が流れにくく、氾濫しやすいという特徴があります。また、洪水時には仁淀川本川の水位の方が高くなり、仁淀川が逆流してくるという特徴も持っています。
さらに、仁淀川流域は年平均降水量が2,500mmを越える多雨地帯であり、日下川流域も降水量が多く、集中豪雨が発生しやすい気候特性を持っています。このため、「日高村の歴史は水害との戦いの歴史」とも言われ、古くから頻発する水害に悩まされてきました。
日下川流域には東西に国道33号、JR土讃線が縦走しており、これに沿って日高村の市街地が細長く形成され、昭和50年以降において宅地開発が進行しています。
また、流域沿川は、豊かな自然環境を残す水田を主とする農地が広がり、生姜生産の他、トマト園芸などが盛んです。
過去の災害と治水対策
昭和50年8月洪水では、日下川流域において浸水面積545ha、床上浸水659戸(うち軒下384戸)、床下浸水121戸等、平地部のほとんどが水没する甚大な浸水被害が発生し、これを契機に国と県による治水対策で浸水被害軽減に一定の効果を上げてきました。
神母樋門の設置(昭和62年3月)
神母樋門の設置
日下川からの排水及び仁淀川本川からの逆流防止のため、明治20年に神母樋門が築造されました。
その後、大洪水のたびに幾度の改修を繰り返し、昭和57年度より県道との合併工事として老朽化の著しい神母樋門の改修に着手、昭和60年度に本体が完成、昭和61年度に上下流の導水路、水管橋及び旧樋門の撤去工事を実施して昭和62年3月末には全面完成しました。
河川激甚災害対策特別緊急事業(昭和51年度着手~昭和57年2月完成)
日下川放水路
昭和50年8月洪水被害を受け、河川激甚災害対策特別緊急事業を採択。浸水被害の軽減を図るため全長5.0km、最大通水量130㎥/sの放水路トンネルを建設しました。
洪水時には、日下川からの洪水が放水路トンネルに流れ込み、放水中は樋門の回転灯が点灯します。
近年の災害と治水対策
平成26年8月の台風12号洪水では、日下川流域において浸水面積274ha、床上浸水109戸、床下浸水50戸、約1週間後の台風11号においては浸水面積214ha、床上浸水18戸、床下浸水47戸と相次いで甚大な被害が発生しました。
仁淀川床上浸水対策特別緊急事業(日下川)(平成27年度着手~令和6年3月完成) 新日下川放水路の建設
平成26年8月台風12号・11号の災害を契機に平成27年度に床上浸水対策特別緊急事業(日下川)に着手し、新日下川放水路を令和6年3月に完成しました。
新日下川放水路は、全長5,368m(うちトンネル部は5,310m)あり、呑口は日高村にある日下川放水路に隣接し、吐口はいの町にある南の谷排水機場下流側で仁淀川本川に接続しております。直径7m、最大放流量は約130m3/sあり、仁淀川で6本目の放水路トンネルです。
国土交通省は、日下川で3本目の放水路トンネルとなる新日下川放水路の整備、高知県は放水路呑口までの日下川及び戸梶川の流下能力を高めるための河川改修事業、日高村は局所的に低い家屋の床上浸水対策として止水壁(輪中堤)を設置し、さらに、事業完了後の内水安全度を低下させないよう床高の規制や雨水貯留・浸透機能の保全といった「日高村水害に強いまちづくり条例」の制定を行いました。
国、県、村が連携してハード対策・ソフト対策を一体的に推進し、平成26年8月台風12号と同規模の豪雨に対し床上浸水被害を解消します。
新日下川放水路のインフラツーリズム
高知河川国道事務所では、自治体や事業者の行うインフラツーリズムの取組を支援しています。
新日下川放水路は令和2年8月に「インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト」のモデル地区に指定され、令和6年3月の完成までに4000人超(有料ツアー含む)が現場見学に訪れる人気スポットとなっています。今後、観光資源のひとつとしても新日下川放水路のさらなる活用が期待されます。