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チガヤーヒメジョオン群落
参考
群落:
トダシバ群落

法面 在来




識別ポイント
堤防法面や高水敷にチガヤが優占していることで識別できる。チガヤはイネ科の多年草で地下茎を伸ばしながら繁茂する。5月の終わりから6月のはじめにかけて真っ白な花穂を出すので、この時期には容易に見分けることができる。トダシバ群落も同様な環境から過湿な低水敷まで広範囲にわたり成立するが、分布面積は非常に少ない。

構成種
群落高は1 〜1.5m 程度である。構成種にはヒメジョオン、カスマグサ、キンエノコロなどの一年・越年生やニガナ、カワラナデシコ、ヨモギ、スギナ、セイタカアワダチソウなどの多様な植物から構成される。構成種数は数種から29 種と幅がある。

成育立地の環境特性
本群落は基本的に、1 年に2 〜3 回程度の刈り取り管理を受けている堤防法面や高水敷などに成立する。刈り取り頻度と成立する植生型についてはススキ群落の頁に詳しく述べている。一方、海岸付近には刈り取りなど人為の影響を受けない自然性のチガヤの優占群落があり、ハマゴウ−チガヤ群落の1 タイプと考えられるが、詳しくは明らかとなっていない。そのような群落もこれまでの河川水辺の国勢調査で調査されているが、群落の位置づけが明らかでないこと、ごくわずかな調査資料だけなので、今回はそれらもチガヤ−ヒメジョオン群落にまとめた。

生態的機能
多様な植物から構成され、チョウが食草とする種が多く含まれることから草原性の生態系の基盤として優れた植生である(ツマグロヒョウモンチョウ(中):食草はスミレ類(左)、ジャコウアゲハ(右):食草はウマノスズクサ)。また、チガヤの根茎は密に成育して土壌を保全する。さらに野草観察などアメニティ性も優れ、多機能を備えた優れた植生である(服部他、1994)

四国での分布
ほぼ全ての河川の堤防法面などで確認されている。


保全上の留意点および保全・創出に関する事柄
前述したように堤防、高水敷など広大なスペースに成立する草原として、環境的価値は高い。現状で刈り取りなどの管理が続けられれば、本群落は維持されていくと考えられる。チガヤ群落の創出には、根茎をつけた株を移植する方法、種子をまく方法などがある(チガヤ草原創出研究会、2000)。このうち、株の移植による群落の創出は、比較的容易である。なお、近年は、チガヤの持つ環境機能に注目され、チガヤ苗や各種緑化資材が流通している。

植物社会学上の位置づけ
チガヤ−ヒメジョオン群集、シバ群団、シバスゲオーダー、ススキクラスである。
服部保・浅見佳世・赤松弘治.1994 .環境保全および環境創造に向けてのチガヤ群落の活用.
兵庫県立人と自然の博物館紀要「人と自然」,4:1‐ 25 .
チガヤ草原創出研究会.2000 .チガヤ草原創出の手引き.近畿地方建設局姫路工事事務所.