平成20年度 吉野川・那賀川合同水防演習が開催されました
〜地域防災へ、みんなで力をあわせよう〜


 

◇はじめに
5月25日(日)、吉野川と那賀川合同での「水防演習」が、吉野川大橋下流の南岸河川敷にて、徳島県警察本部や陸上自衛隊、流域十一市町村の関係者ら約40団体800名の参加により実施されました。
水防演習は、水防関係機関の技術向上・士気の高揚及び地域住民の意識を深める目的で実施しており、吉野川を会場として実施するのは6回目となりました。
  当日は、朝までの雨で足もとの地面はまるで降雨時を想定したかのような状況でした。「大型で非常に強い台風の影響により、吉野川流域で大洪水の恐れがある」との想定の中、午前9時、指揮者(徳島市消防団副団長)の「集まれ」の号令により開始されました。

 

◇水防訓練
水防工法とは、主に堤防の異常に際し、いち早く保護、補完、補修等を加えることで、水害を未然に防ぐ、あるいは最小限に抑えるための、さまざまな技術のことです。実践の中で進化・伝承されてきたその技法は約40種類にもおよび、その大半は緊急時に実際に役立つように、比較的簡単に手に入る資材・器材を用いて人力で施工できる仕組みになっています。
今回の演習では、吉野川や那賀川で実際によく実施する工法を重点的に訓練しました。
具体的には、堤防斜面の崩れ対策工の「シート張り工」、堤防の漏水対策工の「釜段工」、「月輪工」、堤防からの越水対策工の「積み土のう工」、「改良積み土のう工」、「大型積み土のう工」、「積みブロック工」です。

 

◇人命救助訓練、ライフライン復旧訓練
ヘリコプターからの上空調査により川の中州等に孤立者が発見されたとの想定で、舟艇や潜水士等による人命救助訓練が、警察、消防署等の方々により実施されました。
また、暴風雨によりライフライン障害が発生しているという想定で、配電線の復旧訓練・ポータブル衛生を利用した電話回線の復旧訓練・移動電源車と移動無線基地局の開設訓練等ライフラインの復旧訓練も関係機関の参加により実施されました。




◇準備工
“土のう作り”は、水防作業の基本となるものです。土のうは昔から材料が手に入りやすく、製作や取扱いが簡単で、しかもあらゆる面で効果を発揮するため、数多く利用されてきました。土のう作りは、土のう袋に土砂を詰め、ひもで結ぶと出来上がりです。出来上がった“土のう”1個の重さは約30キログラム程度です。
“土のう造成機”とは、河川の異常出水時に堤防の、洗屈、越水、漏水等を未然に防ぐために用いられている土のうを短時間で大量に製造するものです。特徴としましては、小型で自走が可能なため、運搬が容易で少人数でも1時間に最大200袋の土のう製造が可能です。また、操作についても、袋をセットし、ボタン操作により一連の作業を自動で行います。
“杭ごしらえ”は、水防作業の際に使用される多量の杭を用意するものです。作業は2人1組で行い、1人が杭を立て、もう1人がその杭の先端の3面を削っていきます。“杭ごしらえ”用の丸太には、長さ約1.5メートル、直径約10センチメートル程度のものが用いられます。


◇漏水対策工
“月の輪工”は、堤防人家側から漏水する場合に、法面に土のうを半月状に積む工法です。積み上げる土のうの高さは、水圧を弱めるために必要な程度とし、輪の大きさは、漏水する水の量で決まります。中に溜まった水は、パイプあるいはとい等を設けてなるべく堤防から離れた所へ流します。また、土のうの高さが高くなる時は、杭等を打ち込み補強します。

“釜段工”も“月の輪工”とよく似た工法で、堤防人家側の小段或いは法先の平地から漏水がある場合に、小段、法先の平地部に土のうを円形に積む工法です。土のうの積み上げ方、補強の方法、排水の方法等は全て“月の輪工”と同じ方法で行います。

 

◇越水対策工
“積み土のう工”、“改良積み土のう工”は、堤防が沈下したり、増水して、水が堤防を越えるのを防ぐために、古くからよく利用された工法です。土のうだけを積み上げている方が“積み土のう工”、土のうと他の資材を組み合わせて行っているのが“改良積み土のう工”です。

“改良積み土のう工”は、土のうや土が手に入りにくい場合に、木の板や畳、或いは雨戸等を使用したりします。最近では備蓄が可能な軽い鉄板、合成繊維のシート等がよく使われております。本日の演習では、合成繊維のシートを使用し、表法肩から50センチメートルないし1メートル堤内側に引き込んだ位置を前面にして土のうを積み上げます。川側の土のうは堤防に沿って、長手積みに並べます。



◇水中歩行訓練・簡易水防工法など
避難訓練と来場者の体験コーナーとして、洪水等で浸水したとの想定により、水没した時のドアの開閉や水が流れる水路を実際に歩行して避難するなど、実際に水の中に入って体験いただきました。
また、実際に土のうを作ったりロープを結ぶコーナー、家庭にあるナイロン袋や段ボールなどを使ってできる簡単な水防工法や、地震、降雨、土石流などの災害を実際に体験できるコーナーなどで、ご来場いただいたたくさんの皆様に体験していただきました。


◇救護訓練、食糧供給訓練
日本赤十字社や徳島市の婦人防火クラブ連合会の方々の協力により、ケガをした小学生らの救護訓練や非常食の供給訓練が実施されました。
地域福祉に貢献するとともに、地域での防火・防災訓練に参加し地域全体の防火意識高揚のための活動となります。
救護訓練では、エアーテントを使用した現地救護所開設訓練を行いました。
非常食は、地元産のさつまいもを用いた焼き芋が、来場の方々に供給されました。


◇おわりに
これからも吉野川流域の堤防等の治水施設の整備を進めるとともに、国土交通省、県、市町村、地域住民の連携を強固なものとし、一体となって水防体制の整備や強化を図ることが、毎年発生している台風や近い将来予想されている南海地震等による災害を最小にとどめることにつながっていくと考えています。
尚、本演習は徳島地方気象台、陸上自衛隊第14旅団、陸上自衛隊中部方面航空隊、徳島警察本部、徳島東警察署、徳島市、鳴門市、阿南市、吉野川市、阿波市、石井町、松茂町、北島町、藍住町、板野町、上板町、各市町水防団(消防団)、徳島市住吉・城東地区自主防災会、吉野川市自主防災組織、石井町自主防災組織、板野町自主防災組織、徳島市消防局、鳴門市消防本部、阿南市消防本部、徳島中央広域連合消防本部、板野東部消防組合消防団、
板野西部消防組合消防本部、名西消防組合、徳島市婦人防火クラブ連合会、四国地方防災エキスパート、日本赤十字社徳島県支部、徳島県赤十字バイク奉仕団、徳島市地区赤十字奉仕団、国立大学法人徳島大学、徳島県教育委員会(徳島県立徳島商業高等学校)、徳島市教育委員会(徳島市沖洲小学校)、(株)NTT西日本徳島支店、(株)NTTネオメイト四国徳島事業所、(株)NTTファシリティーズ徳島支店、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ四国徳島支店、四国電力(株)徳島支店、(株)四電工徳島支店、NHK徳島放送局、(社)徳島県建設業協会 
以上の団体の方々の協力によって行われました。ご尽力いただいた関係機関の皆様に深くお礼申し上げます。