議事1:共通のテーブル実現に向けた提案(前回提案の補足)


流域住民が参加して、多様な案を探り、選択していくための方法を「共通 のテーブル」で話し合う

■今は、第十堰の新しい案を模索している段階
  建設省は、市民から出てくる他の案も検討したいと言っています。一方、市民案を用意しようとしている市民団体もあります。少なくとも「新しい案を検討する」という点では、同じ方向を目指していると考えられます。つまり、「共有できるテーマ」があるということです。

■案の受け皿や市民参加・合意形成の方法をみんなで考える
  市民団体のみなさんが新しい案をつくるとします。でも、それをどこにもっていって、誰が、どのように評価するのか、それに流域の人たちがどのように関わり、選択していくのかといったことなどが何も話し合われていません。  今のところ、案を持っていく先は建設省しかありません。建設省が善し悪しを判断するのでしょうか?。それでは建設省の価値観との対立というこれまでの繰り返しになるおそれがあります。建設省はそういうことをしたくないといっていますし、市民団体のみなさんも同じ思いではないでしょうか。
 そもそも、第十堰の問題を振り返ってみると、計画過程への市民参加や合意形成に関するきちんとした仕組みがなかったことがあげられます。ですから、それらのことをまず「共通 のテーブル」(市民団体の代表などで構成する)で話し合い、それを流域の方々に返していって、いろいろな立場の住民のみなさんが納得できる仕組みをつくっておくことが大事ではないでしょうか?。
 そうしておかないと、「市民案」が宙に浮いてしまったり、その「市民案」をめぐって新たな市民間対立が生まれるおそれがあります。

■多様な選択肢を用意して、みんなで考える
  これまでは、建設省の案ひとつしかなかったから、○か×かの選択になってしまった。それは、「どんな案がいいか」という選択とは次元がちがうように思えます。市民が求めている参加というのは、「何がいいか」を考えることではないでしょうか?。
 今後、仮に、ひとつの市民案しか出てこなかったとしたら、これまでと同じことの繰り返しになりませんか?。計画の主体が建設省から特定の市民団体に置き換わって、また、○か×かの選択になる。その案の計画過程への市民参加(価値観の異なる市民の参加、流域全体の市民参加など)や合意形成過程も問題になるかもしれません。
 案の中身も重要ですが、第十堰では感情的な対立も少なくありません。ですから、その市民団体とは意見や立場が異なる市民(団体)のみなさんの気持ちも考える優しさがきっと必要でしょう。お互いが他者を思いやる優しさです。いくつかの選択肢(他者の立場も考えた案)があることによって、感情的な次元を越えて、みんなが「何がいいか」を考えることができるのではないでしょうか。
 多様な選択肢をどうやって用意するか。これは、市民(団体)にとっても、建設省にとっても、とても大事なテーマです。

■基本理念や計画条件を共有する
  第十堰をめぐっては、すでに意見対立があり、どちらか一方の価値観に基づく案だと合意に結びつきにくいという側面 があります。意見対立を越えて、いろいろな立場の人が共有できる計画条件とは何か、それを最初に話し合っておくことが必要ではないでしょうか。これは、次の評価システムと関連してきますし、市民が選択に参加する上でも重要なテーマとなります。

■多様な案を評価するシステムを考える
  これまでは市民の意見を建設省が受ける(評価する)、行政が選んだ審議委員会に意見を述べる(公聴会)という方法でした。それはうまく機能しなかったわけです。ですから、案の受け皿や評価基準、評価する人の構成などをあらかじめ市民合意の基に用意しておくことが重要です。そうでないと、市民団体の案に対する評価の受け皿がないことになり、また新たな対立という構造になりかねません。

■広範な流域住民が参加する仕組みを考える
  市民団体などの代表者による「共通のテーブル」のほかに、専門家も含めた「計画条件の検討委員会」や「案を評価する委員会」のようなものが必要かもしれません。それらは、どのように位 置づけたらいいのでしょう。結論を出す機関としていいのでしょうか?。
 そうだとすれば、形こそ違え、「審議委員会」と同じ轍を踏むことになります。市民団体などの代表が参加する「共通 のテーブル」で一致したことも一致しなかったことも、流域の人たちにきちんと返して、いろいろな立場の人が参加できる新しい仕組みを考える必要があるでしょう。

多様な選択肢があるということは、市民選択の段階で意見が分かれることにつながります。しかし、あらかじめ計画条件が共有(市民合意)されているならば、それは深刻な対立用件にはならないでしょう。1回目の選択で上位 の何案かに絞り込み、さらに討論を重ねて最終的な選択をするというようなやり方も考えられます。「計画条件の共有」と各プロセスにおける「市民参加の仕組み」がとても重要です。