ツルの里づくり

1 背景と目的

2 これまでの取り組み(平成14年度~令和2年度)

    2-1 取り組み内容

    2-2 進捗状況

    2-3 これまでの取り組みの効果

3 これからの取り組み(令和3年度~)

    3-1 取り組み内容

    3-2 これからの取り組みにより期待される効果

4 地域との協働・連携

5 動画で見るツルの里づくりのあゆみ

1 背景と目的

古くからツルが渡来していたとされる四万十川流域には、昭和47年からナベヅル・マナヅルなどの飛来記録があり、越冬も確認されていました。一方、鹿児島県出水[いずみ]市には世界のナベヅルの約9割、マナヅルの約5割が集中して越冬しており、伝染病が発生した場合などに絶滅してしまうおそれがあります。このため、平成13~14年に行われた国をあげた越冬地分散化に係る調査で、四万十市は有力な越冬候補地となりました。しかしながら、市街化や宅地化などが進むにつれて、湿地や水田が少なくなり、越冬地として十分とはいえない状態になっていました。
これらを踏まえ、ツルたちが安心して過ごせる環境づくりを目指して取り組んでいます。

2 これまでの取り組み(平成14年度~令和2年度)

2-1 取り組み内容

中筋川で、ツルたちの越冬環境づくりとして湿地の整備と樋門[ひもん]の段差解消を実施しました。 また、四万十つるの里づくりの会などと連携し、地域への普及啓発を行いました。

「ツルの里づくり」(平成14年度~令和2年度)の実施場所

「ツルの里づくり」(平成14年度~令和2年度)の実施場所
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①樋門の段差解消

ツルの餌となる魚などが中筋川から水田地帯に入っていけるよう、5カ所の樋門[ひもん]を改良しました。

樋門の段差解消の整備イメージ

樋門[ひもん]の段差解消の整備イメージ

整備の実施状況(九樹(くじゅう)樋門)

整備の実施状況(九樹[くじゅう]樋門)

②湿地の整備

中筋川にツルの餌場やねぐらになる湿地を2カ所整備しました。

整備の実施状況(中山箇所)

整備の実施状況(中山箇所)

整備の実施状況(間(はざま)箇所)

整備の実施状況(間[はざま]箇所)

2-2 進捗状況

平成14年度から着手し、平成26年度までにすべての整備が完了しました。 整備後は、ツルの飛来状況や湿地環境のモニタリング調査などを継続しています。

2-3 これまでの取り組みの効果

➀ツルの飛来数や越冬が増えました

平成25年度には中山箇所の湿地でマナヅルが越冬しました。
平成27年度には、四万十市における観測史上最大となる239羽のナベヅルが飛来しました(11月11日の記録)。
また、平成29年度~令和元年度には初めて3年連続での越冬が確認されました。

整備の実施状況(中山箇所)
■平成25年度に中山箇所で越冬したマナヅルの様子(動画)

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中村河川国道事務所作成(平成26年3月)、約30MB、再生時間03:57

測史上最大の239羽が飛来した時の様子

観測史上最大の239羽が飛来した時の様子
(平成27年度)
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3年連続越冬となった際のナベヅル

3年連続越冬となった際のナベヅル
(令和元年度)

②ツルの餌となる生き物の種類数が増えました

ツルの餌となる小魚やトンボのヤゴなどの底生動物の種類数が増えました。
川で生まれ、海に出て成長し戻ってくるミゾレヌマエビなどが確認され、段差が解消された樋門[ひもん]の中を生き物が通ったことがわかりました。

ツルの餌となる魚類・底生動物の種数の変化

樋門[ひもん]の段差解消実施前後の
ツルの餌となる魚類・底生動物の種数の変化

ミゾレヌマエビ

ミゾレヌマエビ

樋門に続く用水路で確認されたツル類の餌となる生物

樋門[ひもん]に続く用水路で確認されたツルの餌となる生き物

3 これからの取り組み(令和3年度~)

3-1 取り組み内容

これまでの取り組みによりツルの飛来数は増えたものの、越冬するツルはまだまだ少ない状況です。また、ねぐらや餌の不足が心配されているため、これらの解決に向けた整備を実施します。
さらに、地域との連携の輪を広げ、普及啓発も継続します。

「ツルの里づくり」(令和3年度~)の実施場所

「ツルの里づくり」(令和3年度~)の実施場所
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①ツルがより利用しやすいねぐらの整備

これまでツルは四万十川の砂州を主なねぐらとして利用してきましたが、人の立ち入りなどでねぐらが使えなくなるとツルの数が激減していました。このため、中山箇所と間[はざま]箇所の湿地をツルがより利用しやすいねぐらとして改良します。

整備イメージ(中山箇所)

整備イメージ(中山箇所)

整備イメージ(間(はざま)箇所)

整備イメージ(間[はざま]箇所)

②ツルの餌となる魚類等が生まれ育つ場所の創出

中筋川から多くの餌生物を水田地帯に供給できるよう、魚類等の繁殖場所と成育場所を整備します。

■森沢箇所(繁殖場所)

ほ場整備等により、ドジョウやタモロコなどが用水路や水田で産卵できなくなっているため、川の中に水田と同じような環境(たまり)を造ります。

整備イメージ(森沢箇所)

整備イメージ(森沢箇所)

■中山箇所、森沢箇所、間[はざま]箇所をつなぐ中筋川(成育場所)

孵化[ふか]した魚の子どもたちの成育に適した環境(ワンド(※)・浅場)を造ります。
(※)ワンドとは、川の本流とつながっているが、池のようになっている場所のことです。

整備イメージ(中山箇所、森沢箇所、間箇所をつなぐ中筋川)

整備イメージ(中山箇所、森沢箇所、間[はざま]箇所をつなぐ中筋川)

3-2 これからの取り組みにより期待される効果

①ねぐらや餌が増え、ツルたちがより越冬しやすくなります

②川の中に多様な環境が創出されるため、生物多様性が向上します

③川の中にたまっている土砂を取り除くため、洪水が起こりにくくなります

④水面が増えるため、ヤナギなどが生えて樹林化することが少なくなります

4 地域との協働・連携

「ツルの里づくり」は、地元でツルの越冬環境整備に取り組んでいる四万十つるの里づくりの会など、市民の皆さんと協働・連携して取り組んでいます。
また、令和元年度からは、ツルの定着により地域活性化及び経済振興を目指す「四万十川流域生態系ネットワーク」の取り組みとも連携して進めています。

ツルの飛来状況調査

ツルの飛来状況調査

ツルの自然体験学習会

ツルの自然体験学習会

四万十川流域生態系ネットワークのイメージ

四万十川流域生態系ネットワークのイメージ

5 動画で見るツルの里づくりのあゆみ

地域と連携し、平成14年度から進めてきた「ツルの里づくり」の取り組みの軌跡を動画にまとめました。ぜひご覧ください。

■高知県四万十市 ツルの里づくりのあゆみ

※画像または再生ボタンをクリックすると再生します。

中村河川国道事務所・四万十つるの里づくりの会作成(令和3年3月)、約470MB、再生時間16:13

四万十川自然再生事業は3つの取り組みで構成されています。
事業の構成1 アユの瀬づくり/2 ツルの里づくり/3 魚のゆりかごづくり

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