生物調査編 植物(平成12年度)

平成12年度 河川水辺の国勢調査(植物)の総括


【河川水辺の国勢調査の構成】

 河川水辺の国勢調査は、次の6項目の調査から構成されています。
 ・魚介類調査
 ・底生動物調査
 ・植物調査
 ・鳥類調査
 ・両生類・爬虫類・哺乳類調査
 ・陸上昆虫類等調査
 各生物調査は、それぞれの河川において5ヶ年に1回以上実施し、一定の5ヶ年間で全ての生物調査を1巡させます。今回報告する「平成12年度 河川水辺の国勢調査(植物)」は、植物調査の二巡目の調査に該当します(前回調査は平成7年度に実施済み)。
 なお、今回の報告は、国土交通省による那賀川・桑野川の調査結果について整理しています。

【植物調査】

●調査の内容
 平成12年春季から秋季にかけて、那賀川・桑野川において、現地調査を実施しました。
 現地調査は、那賀川、桑野川の直轄管理区間で実施しました。

●調査方法
 現地調査は、植物相調査、植生図作成調査、群落組成調査、植生断面調査により行いました。

●調査結果の概要
 今回調査の結果、609種の植物を確認しました。前回調査(平成7年度調査)の464種と比較し、145種多い植物を確認しました。
 特定種として、環境庁(1976)『緑の国勢調査−自然環境保全調査報告書』における「すぐれた自然の調査」の対象種として掲載されているトサシモツケ、環境庁(2000)『日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドデータブック−植物T(維管束植物編)』に掲載されているコギシギシ、ハマサジ、ウラギク、ナカガワノギク、フジバカマ、イトモ(絶滅危惧U類)ミゾコウジュ、カワヂシャ、シラン(準絶滅危惧)コアマモ(情報不足)の計11種を確認しました。
 なお、我が国における保護上重要な植物種及び植物群落に関する研究委員会植物種分科会(1989)『我が国における保護上重要な植物種の現状』にはフジバカマ(絶滅危惧種)、ミゾコウジュ、シラン(危急種)が掲載されています。


1.河川の概要

 那賀川はその源を徳島県那賀郡剣山(標高 1,955m)の急峻な山地部に発し、海川、海部谷川、坂州木頭川、古屋谷川、紅葉川、赤松川、谷内川、中山川、加茂谷川、桑野川などの支川を合わせつつ阿南平野を東に貫流して紀伊水道に注ぐ、流域面積874km2、幹線流路延長125kmの一級河川である。
 流域は徳島県の1市5町2村より構成され、流域内の人口は約6万人で、全流域面積のうち山地が92%、平地が約8%を占めている。
 水質をBOD75%値の最近の10年間(平成3年〜平成12年)平均値で見ると、本川の那賀川橋で1.0mg/Lであるが、支川桑野川の富岡新橋では2.6mg/Lを示している。
 河川形態について那賀川を見ると、上流域には小見野々ダム、長安口ダム、川口ダムがあり、それぞれのダムの上流域には停滞水域が広がっている。ダム下流から北岸堰にかけては、流路は蛇行性に富み、瀬と淵が存在する中流域の様相を呈し、河床は礫質である。北岸堰から大京原橋の間は、直線的な河道の中に典型的な交互砂州が形成されている。大京原橋から下流では、静水域が広がっている。また、支川の桑野川は田園地帯を流れており、河川勾配が緩やかである。なお、河口海岸部から那賀川6km付近、桑野川5km付近までは感潮域となっていて、低水路には干潟が見られる。


2.調査内容

(1)調査時期
 那賀川水系の那賀川、桑野川において、現地調査を平成12年5月から平成12年10月にかけて実施した。

  春 季:平成12年 5月15〜17日
  夏 季:平成12年 7月10〜15日
  秋 季:平成12年10月11〜14日

(2)調査地区
 調査地区は、那賀川、桑野川の直轄管理区間とした。(表−1,図−1参照)






(3)現地調査結果の概要

 今回の調査で、植物108科609種が確認された。

・植生分布の状況
 那賀川の直轄管理区間上流端から北岸堰にかけては、流路は蛇行性に富み、瀬と淵が存在する中流域の様相を呈し、河床は礫質である。北岸堰から大京原橋の間は、直線的な河道の中に典型的な交互砂州が形成されている。大京原橋から下流では静水域が広がっている。また支川の桑野川は田園地帯を流れており、河川勾配が緩やかである。なお、河口海岸部から那賀川6km付近、桑野川5km付近までは感潮域となっており低水路には干潟が見られる。
 那賀川の直轄管理区間上流端から北岸堰にかけては、河床の構成材量に礫質が多く含まれるため、通常、空地や放棄耕作地などの比較的乾いた所にみられるオオアレチノギク−ヒメムカシヨモギ群落が、寄洲や中洲に分布していた。山付き部も出現し、アラカシ群落などの樹林環境や露岩からなる自然裸地が点在した。また冠水頻度の比較的低い寄洲においては先駆性低木からなるアカメガシワ−ヌルデ低木群落が確認された。なお南岸堰と北岸堰の間に位置する中洲上には、アカメヤナギ群落が大面積で分布していた。
 北岸堰から大京原橋にかけては、直線的な河道の中に典型的な交互砂州が形成されており、砂州上の植生は冠水頻度と水分環境に応じて帯状に分布していた。すなわち冠水の低頻度から順にアカメヤナギ群落→ヨシノヤナギ低木群落→アキグミ群落→ノイバラ群落→カワラヨモギ群落→裸地となっていた。また流水辺にはツルヨシ群落やヤナギタデ−オオイヌタデ群落が分布していた。
 大京原橋から下流部は、塩の影響を受けるため独特の群落が分布していた。河口付近の海岸部においては、ハマエンドウ−ハマヒルガオ群落、ケカモノハシ群落、コウボウムギ群落などの海浜植生が分布していた。低水路の干潟部においては、ハママツナ群落、ハマサジ群落、ウラギク群落などの近年激減している塩沼植物群落がまとまって分布していた。河床が礫質から砂質〜泥質に変化するに従って、ツルヨシ群落からヨシ群落の割合が多くなる傾向が認められたが、流水辺で確認されたヨシ群落はシオクグなどの塩沼植物を伴っており、今回の調査ではヨシ群落(塩沼地)として区分された。また河口付近の浅瀬においてはコアマモ群落も確認された。
 高水敷についてみると、やや湿った砂質地にはオギ群落がみられ、やや乾いた立地にススキ群落、富栄養な適潤地にはクズ群落、適潤の陽地には河川敷によくみられる帰化植物群落であるセイタカアワダチソウ群落などが分布していた。クズ群落は、他の植物を覆う形で、かなり広い範囲に分布していた。
 桑野川においては砂州、低水敷の発達は見られず、護岸整備も進んでおり、ヤナギタデ−オオイヌタデ群落、ヨシ群落などの水辺の群落はほとんど確認されなかった。山付き部分の斜面林としてスギ−ヒノキ植林、竹林が分布し、高水敷においてはチガヤ群落、ススキ群落が多くを占めていた。なお、岡川との合流地点付近まで塩の影響を受けており、ヨシ群落(塩沼地)やエゾウキヤガラ群落などが小面積で確認された。


  



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