←ホーム | 文字サイズ:文字サイズ小 文字サイズ中 文字サイズ大



平成24年1月23日、高松サンポート合同庁舎で「新しい公共」活動報告会を開催しました。

国土交通省では地域活性化や国土管理上の諸課題への対応を図るため、「新しい公共」の考え方による地域づくりを支援しております。

四国地方整備局においても、平成21年度から四国内で地域課題解決等のため様々な活動を行っている団体の情報交換、交流等の場として報告会を開催しており、今年度は活動報告団体に加え、NPO法人、地方公共団体、金融機関など、約60名が出席し開催しました。

報告会では四国内から6団体、愛知県・福井県からそれぞれ1団体の8団体から活動の状況等を発表の後、参加者全員による活発な意見交換が行われ、「新しい公共」の役割やこれからの活動について考える有意義な場となりました。


  ◆報告会に関するお問い合わせ及び四国内で地域づくり・地域活性化等の活動に関する情報をご提供頂け
   る場合は、下記担当までご一報ください。

        担当:計画・建設産業課 杉浦課長補佐 中本計画調整第一係長
            TEL(087)851-8061(代) FAX(087)811-8414
            Mail:keiken@skr.mlit.go.jp

           

※以下、活動報告の内容に関しましては、分かりやすくするため、要約・内容の追加等の構成を行っております。



 活動報告会は、国土交通省国土政策局地方振興課 古澤課長補佐による開会のあいさつで幕をあけました。



国土政策局 地方振興課
古澤課長補佐

 本日はお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 私ども国土交通省では、「新しい公共」の担い手による活動の環境整備を進めていきたいと考えております。
 そういった際に、このような活動報告会等において、実際の活動によって生じてくるさまざまな課題、あるいは取り組み方法、また何が必要なのか、といった皆様方からの情報は、今後の施策検討に当たり重要なものになると思っております。
 また、実際に活動されている方々が集まって意見交換することによって、単なる一方通行の活動報告ではなく、皆様方の横のネットワークができるのではないかと考えております。
 今後の「新しい公共」では、若い人、外の人を取り込んでいくことが必要になると思います。その際には、インターネットだけではなく、皆様方一人一人が外に向かってPRすることが必要になってくると考えております。今回の報告会につきましても、そのような機会の一つとして捉えて頂ければと思います。


【発表団体】  ※発表順
【活動報告1】 むれ源平まちづくり協議会
【活動報告2】 まんのう町社会福祉協議会
【活動報告3】 大平を楽しむ会
【活動報告4】 越知町虹色の里横畠
【活動報告5】 株式会社四万十ドラマ
【活動報告6】 社団法人高知県自治研究センター
【活動報告7】 小原ECOプロジェクト
【活動報告8】 特定非営利活動法人楽笑




むれ源平まちづくり協議会/会長 新谷 稔(にいたに みのる)氏
活動地域:香川県高松市牟礼町
モデル事業名:地場産業・地域資源を活かした循環型ローカルコミュニティの構築プロジェクト

 高松市牟礼町の説明をさせていただきますと、高松市の屋島の裏側、東部地区で、地場産業としては庵治石中心の石材の町でございます。ちょうどいま大河ドラマで「平清盛」が始まりましたが、この一帯で源平合戦の屋島壇ノ浦の戦いが行われ、源平の史跡なども豊富にある史跡文化と庵治石の産業の町でございます。
 我々が取り組んでいる「新しい公共」「新たな公」のイメージでございますが、「持続可能な循環型ローカルコミュニティ」という表現を使わせていただいております。どういうことかと言えば、要は地域の中でヒト、モノ、カネすべてのものをうまく自立した形で循環できる仕組みをつくっていきたいという発想で行っております。
 「石あかりロード」というイベントがございます。このイベントは最初からこの構想があったわけではないのですが、ここ2、3年の流れの中でこの「石あかりロード」というイベントを単なる地域イベントで終わらせるのではなく、地域のハブになるようなイベントに育てていきたいと考えております。
 今後の取り組みの大きな課題としてやはり担い手づくりというのが大きな問題ではないかと思います。
 もう一つは、集客、賑わいという部分で、地元の資源、史跡文化とか地場産業の石材というものをうまく活用した、食もそうですけれども、そういったものを体感、体験できるものに踏み込んだ、持続的な、恒久的な、それで実際にお金の循環が生まれるようなものとして商品化できるようなものの開発をきっちりしていきたいなと思っています。


[質疑応答]

(参 加 者)

 今後の取り組みに「未来を担う子供たちの人づくり」とあります。これまでの総合学習等に子供の参加が多々あったと思いますが、そこで子供たちからどんなことを感じさせてもらえましたか?

(報告団体)

 日本中、どこに行っても同じことが言えると思うのですが、地元の人ほど地元のことを知らないものです。「屋島会議」の中でとったアンケートでは、高松市にいながら屋島に1回も行ったことがない人が50%を超えていました。
 子供たちと地元の事をやっていると、牟礼町の「へぇ〜」な話がいっぱい出てきて、案外全然知らないんだな、と毎年感じさせられます。「庵治石って、ここでとれるの?」と言う地元の子供もいて、そういうことで毎年一番びっくりさせられます。


▲ページの一番上へ



社会福祉法人まんのう町社会福祉協議会/次長 篠原宝子(しのはら とみこ)氏
活動地域:香川県仲多度郡まんのう町
モデル事業名:限界集落緊急対策 「命見守り ほっと安心」のモデル集落事業

 まんのう町は、2万人弱の人口で高齢化率が30%を超えている中山間の町でございます。高齢者、特に一人暮らし高齢者世帯が多くなっている現状がございまして、福祉施設はかなり多く、介護保険料は香川県一、皆さんに払っていただいているような状況でございます。
 活動内容は、見守り、声かけを中心とした集落づくりといったところで、これは集落間で見守りたい人、声をかけたい人を選んでいただいて、そのチームを使って見守り、声かけをしていき、その中で地域の課題を見つけ、そしてそれを自分たちで解決していただこうというもので、全世帯の20〜25%ぐらいに参加いただいております。
 今年度は、「ほっと安心カード」というものをつくって全世帯に配付いたしました。家族の連絡先とか近隣の重要な連絡先を書けるようにしております。これをつながりを深めるきっかけづくりにし、また、自分たちの地域のことなのですが、知っているかと思っていたら、よく知らなかったりもするということで、地域福祉マップづくりといった事業を選択事業として実施する予定です。
 このマップには、防災関係の拠点となる公共的施設、避難所、地形で崩れやすいところや氾濫しやすい川とか、主要な幹線道路などを記載します。人的なものではボランティアさん、自治会長さん、また、一人暮らしの方など、支援が必要な方も盛り込むように基本を示して、集落の方が考えて独自にマップをつくっていく事もしております。何年か後には町と連動したマップも作成できたらと思っています。
 今後の課題としては、リーダーの育成やリーダーを支援する仕組みが必要と思いますし、リーダー一人だけではなく、それを支える人たちも育成していく必要があるのではないかと思います。


[質疑応答]

(参 加 者)

 これだけの見守り活動をやられていまして、事業にどれぐらいお金がかかっていますか?

(報告団体)

 今年は150万円の予算です。来年度は200万円ぐらいです。集落の自治会の単位によって助成金額が変わってきます。


▲ページの一番上へ



大平を楽しむ会/代表 豊島 正之(とよしま まさゆき)氏
活動地域:愛媛県宇和島市津島町
モデル事業名:“牛鬼の里 うわじま”消えない集落づくり事業

 大平地区というのは宇和島市津島町南部の、隣町との境にございます。峠を隔てるとお隣の愛南町でございまして、山が半分ぐらいを占め、狭い田んぼや畑を耕してどうにか住めるようなところです。僕の村というか集落は、いま実際に住んでいる軒数は10軒、人数は12人です。
 地区の昔の文化・芸能、たとえば秋の三番叟といった文化の語りから振り付けまで、過去にあったものを復元、復活しようと調査をしています。それから、宇和島市全体で取り組んでいる、民宿関係の方々と一緒にツーリズム関係の事業もしている団体です。
 今年度は、どぶろく特区に認定され、どぶろく用の米を毎年栽培している棚田でライトアップを行い、大平ではめったにないことで、かなり喜ばれました。また、思うほどは進んでいないのですが、お遍路小屋の復元として丸太小屋をつくり、大人や、子供たちが川遊びやたき火などができたらと提案して、現在活動しているところです。最初の年に整理した村の歴史や文化を、丸太小屋の中に展示したり、パソコンなどを置いて見られるようにできたらと思っています。さらに、ホームページをつくって行事の広報とか、資料や写真などもそこに載せるようにしたいと考えています。
 来年度は、集落を通っているお遍路道の清掃活動はもちろんのこと、お遍路さんを接待する体験をしてみませんかということで、清掃活動と同時にお遍路道を逆に上がっていって、大平の集落を通りながらお遍路さんをおもてなしするという活動を予定しています。


[質疑応答]

(参 加 者)

 以前、いまお住まいの方々のご家族、兄弟、孫、そういった方がふるさとに帰ってきて欲しいということでT型調査をされたとのことですが、最近はお帰りになられる方は増えていますでしょうか?

(報告団体)

 熊本大学の徳野貞雄先生が1軒1軒の調査をしてくださいました。当時の人口は17人だったのですが、その息子や孫を入れると100人近くになることがわかりました。実際にそのうちの1軒は子供が帰ってきて、農作業をしています。
 活動をはじめた頃は、消えていくに違いないから、ここに大平というところがあった証拠を残すような意味で始めた面が大きかったのですが、望みがまだ残っているんじゃないかと思っています。


▲ページの一番上へ



越知町虹色の里横畠/会長 大原 泰生(おおはら やすお)氏  事務局長 武智 龍(たけち りゅう)氏  
越知町緑のふるさと協力隊 川合 里奈(かわい りな)氏
活動地域:高知県高岡郡越知町横畠
モデル事業名:交流促進による地域活性化モデル事業

 横畠地区は8集落で住民276人、高齢化率が53.7%という状況のなかで、平成15年2月にこの会を立ち上げ、我々の地域にあるもの、できること、やれることをテーマに取り上げてこの活動に入ってまいりました。その後、第2次虹色の里プランを立て、「農山村に磨きをかける」「学校を活かす」「人と人とのつながりを大切にする」という3本の柱を立てて取り組んできました。
 その中で、今年度「緑のふるさと協力隊」より、1名派遣して頂くことになり、地域の空き家を探し、リフォーム等をして受け入れました。この方が地域の活動の中に飛び込んでいただき、いろいろな活動に加わってもらえることによって、我々の地域のイベントも元気を取り戻すことができました。
 この他にも、大学生を招いてそば打ち体験をしてもらったり、平成23年には地区交流会を7回開催し、10年先を見て行動する「夢を語る会」の開催等もおこないました。
 今後の展望ですが、空き家にこれからもぜひ協力隊を入れ替えて呼んで、横畠に住んでいただきたいと思っています。もしそれが不可能だった場合でも、移住希望者にお試し期間として「1週間でも10日でも半年でもどうぞご自由に」というふうに活用していきたいと思います。あと、IターンとかUターンにも活用していくようにしたいと思います。空き家がこんなに使えるということがわかったので、これからもいろいろと知恵を絞ってやっていきたいと思っています。


[質疑応答]

(参 加 者)

 住んでもらう方々に「こういう利点もあります」と都会の方に言えるところはありますか?

(報告団体)

 田舎に来ようと思う方は大体、農業に興味があったり、田舎の生活に憧れていると思うのですが、いきなり個人で行いっても繋がりがないのです。横畠は地域の方々が最初から関心を持って下さっていたのでお世話もして頂けましたし、「何か困ったことはないですか」と、近所の方が温かく迎えてくださったことがすごく大きいなと感じています。

(参 加 者)

 大学生を招くということで、その後、幾つかの大学に広がっていますけれども、それはどうやって広げられたのでしょうか?

(報告団体)

 こちらからアプローチしたのは高知大学の内田教授の社会教育だけです。視察に来てその後来た学生さんに、旅館もないのに「泊まらせてほしい」と言われたんですが、横畠の人たちは接待が非常にうまいので、それが気に入って2回目も来てくれて、今度、3回目もまた行こうかと。そういう感じで、県が窓口になって広がりました。


▲ページの一番上へ



株式会社四万十ドラマ/研究員 佐々倉 玲於(ささくら れお)氏
活動地域:高知県高岡郡四万十町・四万十市
モデル事業名:四万十川・RIVER会員制度を活かした地域資源活用プロジェクト

 四万十川近くの山の中で活動しております。197kmある四万十川の真ん中あたりが拠点になっていまして、四万十市にもまたがっているのですが、そのあたりで活動しております。
 四万十ドラマは第三セクターからスタートして、その後、地域の人たちで株を買い取って、住民株式会社という形になりました。 
 これまでそれぞれやってこられた地域の生産者の方とかリーダー的な方々が、地域のつながりというところで、コミュニケーションの機会をどう増やしていくか、その仕組みをどうつくるか、また、つなぎ役になるコーディネーターの人材育成方法などについて研究を行いました。そういう土台があっていろいろ見えてくることがあったのですが、ちょうど経済産業省とか内閣府の事業の募集が重なっていましたので、それに対して取り組みをしてみようということでほかの展開につながっていきました。
 地域密着型インターンシップ研修として、四万十に来て1カ月間、田舎ビジネスをやっている方々のもとで仕事を体験するとともに、田舎暮らしを体験するインターンシップ事業では165名の若者が参加し、昨年12月の終了時には、うち20名が四万十川流域に定住し、いま仕事に就いているという現象が起こっています。
 情報発信してみると本当にこれだけ来てくれたということに驚きまして、いままでは情報発信ができていなかったということに気づいたところです。若い人がいることで地域内のつながりを保っていくことができるということが見えてきましたので、こういう方法をどう継続していくかということで仕組みをつくって取り組もうとしております。
 もう一つは、インターンシップのコーディネートとか人材育成にかかわっている人たちや、ソーシャルビジネス事業者の方々が呼びかけ人になりまして、四国に若い人たちを集めようということで動き始めています


[質疑応答]

(参 加 者)

 20人の方が定住されているというお話がありましたが、どういった職業についているのかを教えていただけますか?

(報告団体)

 移住してきた人の職業はいろいろです。四万十ドラマで採用した人もいれば、周辺の主に農家さんのところで、アルバイト的に働いている人もいます。観光協会に採用された人もいまして、結構多様な職業で残っています。ですが、みんな正職員で採用されているという訳ではないです。

(参 加 者)

 どうしてNPOではなく初めから株式会社という活動をなさったのですか?
 参加する人々の経済的自立、起業支援とか雇用の確保ということもあるでしょうし、株主さんへの配当もありますので、なかなか険しい道のりであるわけですが、いままでのNPOに縛られたところであれば活力をわき立たせる上で限界があると思いますので、私は株式会社という発想は正しいのではないかという気がしておりますが。

(報告団体)

 組織体はあまり重視されていないと思いますが、地域の中でどう雇用をつくるかというところで、商品開発にしても何をするにしても、地元の人に仕事が回るようにとか、生産者から商品を買うとか、四万十ドラマだけが儲かるのではなく、地域の中にお金が回るような仕掛けとか仕組みを動かしているという事を行っています。地域全体でそれだけのお金が回るということに意味があるということを個人的には感じているところです。


▲ページの一番上へ



社団法人高知県自治研究センター/理事 畦地 和也(あぜち かずや)氏
活動地域:高知県幡多郡黒潮町
モデル事業名:コミュニティビジネスが生む地域の支えあい仕組みづくり事業

 高知県の黒潮町のような中山間地域で高齢者が多いところでは農作物の販路及び集荷体制の確立が高齢者の生きがいにつながるという課題意識があります。ところが、現行の高齢者の生きがい対策はどちらかといえば、高齢者をみんなで支えましょうというものが多く、それは高齢者をお客様とする福祉産業でしかありません。これでは本当の解決には繋がらないと思い、我々は「産業福祉」という視点で物事を考えていくことにしました。
 2010年7月より黒潮町の政策として町内全域で庭先集荷事業を実施しています。仕組みは簡単です。決められた曜日、場所に荷物を置いてもらって、それを集めて直売所に持っていくだけです。有限会社に事業を委託して、現在、4名の方に集荷に当たっていただいております。サービスを利用して変化したこととしては、楽しみ・生きがい・目標・希望ができ将来の展望がうかがえるようになったり、家庭・地域内・地域外での交流・新たなつながりが見えてくるようになったと思います。
 「耕作・出荷意欲が増した」「売れるのが楽しい、面白い」「以前よりも張りがある(楽しい・充実している)」との声が挙がり、いろいろな面で効果が見られました。
 「庭先集荷の効果」はいろいろありますが、こういう産業振興的効果から保健福祉的効果、また、地域に人が住めるということですので地域活性化、あるいは耕作放棄地を改めて耕作してつくり始めたという方もいらっしゃいます。そういう意味では集落維持の効果があると思っております。
 産業と福祉というのは表裏一体のもの、コインの裏表のような関係であると強く思うようになってきたのですが、ここにはまだ大きな見えない壁があります。それは制度の壁であったり、意識の壁です。しかし、庭先集荷の試みが新しい公共の概念を示唆しているというように思います。
 「『働く幸せ』はすべての人に通じる」というのが「産業福祉」のテーマであり、これからは保護より機会を与える「新たな公共の概念」というものを考えていきたいと思います。
 どんどん高齢化社会になってきまして、これまでは高齢者など「支えられる側」と、若い公共サービスを担う「支える側」のバランスがとれていたのですが、このバランスがだんだん崩れてきました。ですから、いままでは支えられるだけだった人たちも、場合によっては支える側に回るような社会の仕組みが必要なのではないかと思います。


[質疑応答]

(参 加 者)

 庭先集荷の車の運行費はどれくらいですか。また、それをやってくださっている人はどういう生きがいなり意味合いを持って巡回していただいているのでしょうか?

(報告団体)

 行政のほうから民間の会社に事業委託をしており、その委託費が年間約750万円で、それぞれの方に払う報酬の中には車の維持費や燃料費が含まれています。
 それからいつも出している人なのに商品が出ていないと、気になって元気かどうか姿を確認したり、また、生産を始めたことで自然と畑に出ていきますので、そのことによって地域の人との交流になり、それが自然に見守りになっているのかなと思っています。


▲ページの一番上へ



小原ECOプロジェクト/代表 國吉 一實(くによし かずみ)氏
活動地域:福井県勝山市北谷町小原
モデル事業名:伝統的古民家再生と地域資源の活用を通じた新たなコミュニティの創出

 福井県勝山市は、全国の恐竜化石の約80%以上が産出されていまして、恐竜博物館がございます。その勝山市と石川県境に近いところに小原集落がございます。明治の最盛期のころには90戸、500人ぐらいの方が住んでおられましたが、過疎が進む中で住民はお2人になりました。それから冬季の間3mを超える積雪になります。こんなところですが、この集落を通って年間6000人ぐらいの登山者が来られます。
 空き家となった古民家の修復・再生の活動を福井工業大学と協働で行っております。またこの集落は1000年を超える歴史があり、いろんな自然資源、もちろん文化資源も利用しながらエコツアーを実施しています。
 目的としては、「地域の存続と伝統的地域資源や自然資源を未来への財産として残す」ということと、もう一つ、住民がいなくなった時に、その地域は誰が管理するのかというテーマがあります。
 ここの住民は2人になりましたので、集落機能、コミュニティは崩壊しています。その中でコミュニティをまた新たにつくり直す「コミュニティ創出に向けた実践活動」の中でボランティアの方と地域活動の実践をしています。コミュニティビジネスを立ち上げて、私たちの団体の活動資金にするということを普段やってきています。その中で持続可能な地域、活動を目指していくということです。
 本当に小さな集落かもしれませんが、それを維持することで国土形成の一端を担えればいいなという思いもあります。
 将来展望としては、この集落が何らかの形で社会的に必要性があるとことを提示しないといけないと思っています。例えば森林が2600haぐらいあるんですけれども、その森林で間伐を実施するとかいろんな形でCO2の削減に貢献しているとかそういうことを提示して、住民がいなくなってもこの集落は必要であるということを訴えることも必要ではないかと思います。


[質疑応答]

(参 加 者)

 存在意義と是非という部分は、いま皆さんの中で議論されているのはどういうことでしょうか?

(報告団体)

 正直、答えは見つかっていないのですが、活動を通じながら、発信していく中で、いかにこの集落の存在を認知してもらっていくかです。長年の歴史に培われた文化がありますし、自然もすばらしいものがあります。少しでも交流人口がありますので、この集落、この地域を大切にしてもらうこと、それこそがこの集落の意義なのではないかなと。PRして存在を認識してもらうことがまず第一歩だと思っています。

(参 加 者)

 かなり古い民家をあそこまで修復するとかなりお金がいると思うのですが、その費用面はどうしておられるのでしょうか?

(報告団体)

 国交省の「新たな公共」の事業は、もちろんソフト事業という意味合いで、二百何十万円かのお金をいただきまして、福井工業大学の学生さんとの協働で進めていきました。学生さんたちが夏休みの1カ月から1カ月半ぐらい滞在して実施し、その中で滞在費の一部や、古民家を直す中での食事をみるとかそういうところで金額としては捻出しました。でも、ほとんどが日本建築の学生さんのボランティアでまかなっているということです。
 最近は子供の数の減少で入学者数も減ってきているのですが、福井工大さんは結構協力的に、「こういう古民家の修復活動ができます」ということでPRしてくれたんです。そうしたら、これがやりたいがために学校に入ったという学生さんが数名いました。


▲ページの一番上へ



特定非営利活動法人楽笑/理事長 小田 泰久(おだ やすひさ)氏
活動地域:愛知県蒲郡市三谷町
モデル事業名:市民協働型地場産業活性化事業
「新たな公」+マーケティングによる地域資源を利用した活性化モデル

 愛知県蒲郡市は人口8万人です。産業は温室ミカンが有名です。あと、海のまちですので漁業が盛んです。それから、昔は繊維の貿易が盛んでした。「ガチャ万蒲郡」という言葉がありまして、織機がガチャンと音をたてれば万、というお金が入ってきた時代がありました。そして、300年以上続くお祭りが有名で、古くからのコミュニティが存在します。
 私たちの楽笑という団体は障害福祉サービスの提供を基礎として、障害者居宅介護事業、ホームヘルパー派遣とか就労継続支援等の障害者サービスをやっている団体です。
 経営方針は滋賀の近江商人のポリシーである、売り手よし・買い手よし・地域よし、の「3方良し」です。
 私が事業を立ち上げたのは5年前で、最初は障害者施設という事で反対運動が起こりました。蒲郡市の三谷は本当に企業がなくて、働く場所がないんです。そこで、障害者だけではなく地域の人が働ける場所、子供集まれる場所として、パン屋と駄菓子屋を立ち上げました。市民の方のニーズを形に変えれば障害を持つ方も暮らしやすくなるし、雇用も生まれてまちも活性化します。
 それから、もともと三谷は漁業のまちです。三谷の漁港が活性化すればいいなという思いで、干物屋を考えましたが、これも反対されました。なぜパン屋のときはうまくいって干物屋のときはうまくいかなかったのかといいますと、パン屋は競合する相手がいなかったからです。三谷町にはパン屋が1軒もなかったので地元の方が受け入れてくれたわけです。地場産業は競合する相手ばかりですから、それは怒りますよね。そこでマーケティングして、地元の方と一緒に新しい販路をつくっていきましょうという合意形成をとり、干物屋を始めました。また、ギョギョウランドという形で、大学生が企画・運営をして、子供たちに地元の仕事、働く場所とか地元の魅力を伝えるというイベントを実施し、今年度は2000人の来客を記録しました。
 最初、「最終的には楽笑が責任をとってくれるだろう、楽笑が全部回してくれるだろう」という感じだったのが、いまでは共同体でみんなが責任を分かち合いながら、「次はどうする?」「俺はこれをやるから、お前はこれをやってくれ」という感じになりまして、まだまだですけれども、5年目にしてようやくそこまでたどり着きました。



▲ページの一番上へ



 活動報告会の最後として、この報告会の全般について、参加者の方からのご意見をいただきました。

○国土交通省のホームページに地方振興アドバイザーのフォローアップ調査というものを載せています。
昭和63年から平成21年まで学識経験者の方が日本全国の地域に入りましてアドバイスしたことの要約が載っておりますので、見ていただければと思います。

○各活動団体のホームページや緑のふるさと協力隊の方などのブログには、素直な感想が載っていて、我々の刺激になるようなことがあります。どんどん情報発信していただければ、常にそれを拾う人がいる、見ている人がいるということでもあると思います。

○情報発信というのは、言葉で言うと簡単なのですが、まず発信する情報がないといけませんし、載せるという行為がないと誰も見てくれませんので、皆様方にはそのあたりのことももう一度、お考えいただければと思います。

○私の町役場の課の20名を連れて行きたいのですが、みんな新年度予算の対応で窓口にくくりつけられていて、忙しくて連れてこられないのです。こういう研修の場に私どもの課員が来られない事がもどかしいですね。




 参加者の方からのさまざまなご意見をいただいて、平成23年度「新しい公共」活動報告会は閉会となりました。
 今後も、活動団体の横のつながりを設ける場として、このような報告会を開催できればと考えています。


▲ページの一番上へ