懸念1
この分水事業は、中予水資源開発計画に基づき、中予地区の将来にわたる安定した水の供給を図る上で、肱川流域が述べられている人道的な立場からの生活用水の確保のみならず、都市の経済活動の発展を支える工業用水の確保も謳われており(毎秒1.95m3)、仮に余力としてしめされた毎秒1.35m3では、工業用水の中止も含め、県都松山市をはじめとする中予地区の将来への都市発展に不可欠な水の安定供給に不安が残る。 |
(安定性) |
○分水事業は、分水される肱川流域の理解が必要です。
肱川にとどまらず、我が国の河川の流域では、洪水の危険と戦いながら、川の恵みを享受してきました。分水とは、流域のかけがえのない恵みの1つである水資源を他地域に送るものです。このため、中予分水事業の実現にあたっては、まず分水に対する肱川流域のご理解をいただくことことが不可欠です。
○肱川流域のご理解を得るため、計画を見直しました。
見直し前の計画*は、分水に伴い水量が減ることや肱川の河川環境への配慮が不十分であること等から、残念ながら肱川流域のご理解が得られませんでした。
このため、平成6年の基本計画公示後も事業は停滞を余儀なくされました。平成12年には、全国的に公共事業の見直しが行われることとなり、山鳥坂ダム建設事業も事業評価監視委員会において審議いただきました。その結果、事業継続との結論はいただきましたが、「地域の要請を踏まえた計画の見直しは必要であり、可能な限り早期に合意を図ること」との条件が附されました。
このような状況の中、愛媛県からは、肱川の治水、河川環境、利水対策を優先とした上で中予分水することを基本として、鹿野川ダムの発電容量等の見直しや工業用水の中止等のご提案をいただきました。
これらを踏まえ、見直し計画づくりが可能となりました。
*見直し前の計画:平成6年8月に公示された基本計画に基づく山鳥坂ダム建設事業及びそれに対応した中予分水事業(1.95m3/sを分水)
○肱川から分水できる量は最大で 1.35 m3/sです。
計画の見直しに際しては、肱川の治水、河川環境、利水対策を優先した上で確保できる水量を余力とし、その範囲内において中予分水する考え方といたしました。
その結果、分水できる量は最大で1.35m3/sとなりました。
○平成6年の大渇水も 1.35 m3/sの分水で、給水制限はほぼ解消します。
中予地区で近年最大の渇水であった平成6年でも、仮に肱川から1.35m3/sの水道用水が送られていたなら、松山市の給水制限は、ほぼ解消されていたと試算されています。
○水源の多様化が、安定性に大きく寄与します。
水源は多様化しているほど安全度も高く安定的な都市運営が可能になると言われています。渇水が頻繁に発生している香川県高松市でも、多様な水源を確保しています。
○他の水源で、1.35m3/sの水量を一括して確保することは困難と思われます。
将来のために1.95m3/sの水量が必要とされていますが、今回、見直し案に記載しておりますように、分水可能であるのは1.35m3/sしかありません。また、肱川以外の水源で、この水量を一括して確保することは困難と思われます。
まず、1.35m3/sを確保し、残りの水量について別途手当を検討されるという考えがあると思われます。
○必要水量を表明していただくことが大切であると考えます。
分水の性格上、水を受ける中予地区側が、必要水量を明示されることが必要です。中予地区として、分水の最大可能量1.35m3/sに対し、どれだけの水量の分水が必要なのかを表明していただくことが大切であると考えます。
懸念2
見直し案に対し、山鳥坂ダム建設分水対策協議会が分水問題を先送りされており、分水が受け入れられるかどうかについての判断ができない状況である。 |
(実現性) |
○肱川の余力である1.35m3/sの範囲内において中予分水する考えです。
見直し案では、肱川の治水、河川環境、利水対策を優先した結果、肱川の「余力」は1.35m3/s相当となりました。その範囲内において中予分水する考えです。
○肱川流域の理解が得られていると考えています。
見直し案では「余力」として提案させていただきましたが、山鳥坂ダム(建設分水)対策協議会からいただいた回答では、「肱川の課題解消方策と中予分水がセットであると認識しています」とされており、また分水に関しては「人道上無関心でいることはできません」との意志が示されています。この回答にあたっては肱川流域内市町村の議会議決等もいただいています。
これらのことから、四国地方整備局としては、1.35m3/sの範囲内で中予分水するという考えについては、肱川流域の理解が得られていると考えております。
○中予地区のご意向が待たれています。
山鳥坂ダム(建設分水)対策協議会からいただいた見直し案に対する回答では、「今回の見直し案の中には具体的提示がなく、さらに中予側の意向も出ていない状態にあることから、現時点で判断することは困難」とあります。これは、見直し案に対する分水を受ける側の意向が先との認識があったものと伺っており、まず中予地区のご意向を明確に提示していただく必要があると考えます。
懸念3
山鳥坂ダム事業費が圧縮された一方で、肱川流域の治水、下流の正常な河川維持流量の確保のため鹿野川ダムを一体化することとしたため総事業費が増加し、中予地区の負担も増えることとなった。このことにより、水利権を持たない鹿野川ダムについても将来にわたって負担を強いられる可能性がある。 |
(コスト面) |
○分水事業前進のため、鹿野川ダムを活用することになりました。
山鳥坂ダム単独の容量では、肱川の治水、河川環境、利水に関する課題の解消を図ることは不可能でしたが、愛媛県から肱川流域のために鹿野川ダムの発電容量等の見直し等のご提案をいただき、見直し計画が可能となりました。
○中予地区のご負担が増加するのは山鳥坂ダムの利水容量を大きくせざるを得なかったためです。
中予地区のご負担の対象となる山鳥坂ダムの事業費については、見直しに際して経費を精査し、見直し前の1,070億円から1,030億円に低減させております。
しかしながら、見直し案では平常時にはダムがない自然の流れを復活させるため、分水に必要となる山鳥坂ダムの利水容量は大きくならざるを得ませんでした。
中予地区の負担が増加するのはこのためであり、見直し前の計画における負担額約218億円に対して約22億円増加することになりました。これは、平成6年3月に愛媛県で定められた「松山市外2市5町広域的水道整備計画書」による中予水道用水供給事業の総事業費約1,300億円の2%弱に相当いたします。
○鹿野川ダム改造は河川管理者負担で考えています。
鹿野川ダムについては、見直しの結果、施設改造が新たに必要となりましたが、それに要する費用は全て河川管理者の負担と考えております。
事業の実施に際しましては、お示しした事業費の範囲内で納められるよう、コスト縮減等に最大限の努力を払います。
なお、鹿野川ダムの維持管理費についても、基本的に河川管理者が負担することと考えております。
懸念4
計画見直し案で示された事業費及び負担額だけ捉えても、中予広域水道企業団の供給単価(卸値)は、現計画の220円から270円程度にアップする見込み であり、水道料金に及ぼす影響を心配している。 |
(コスト面) |
○まず県と十分相談されることを望みます。
中予広域水道企業団の経費は主に山鳥坂ダムの負担金と中予分水事業からなっていると伺っております。
平成6年3月に愛媛県で定められた「松山市外2市5町広域的水道整備計画書」による中予水道用水供給事業の総事業費は約1,300億円ですが、見直しに伴う山鳥坂ダムの負担増分は約22億円であり、2%弱に相当いたします。
水道料金の上昇に対するご懸念については、愛媛県も補助率の嵩上げに関して話し合いに応じる姿勢であると伺っており、本件については、県と十分に相談されることを望みます。
懸念5
中予分水取水施設は、国土交通省が設置する検討委員会で改めて検討されることとなっており、変更如何によっては、分水事業費全体に大きく係わってくる問題となることが心配される。 |
(コスト面) |
○取水施設は中予広域水道企業団が計画する施設です。
山鳥坂ダム建設・中予分水事業は、肱川の治水、河川環境、利水対策と併せて新規用水の水源としてダムを建設する「山鳥坂ダム建設事業」と、ダムによって確保された水を中予地区に送水する「中予分水事業」の2つから成り立っており、その各々に事業者が存在します。
山鳥坂ダム建設事業は四国地方整備局が事業者で、中予分水事業は中予広域水道企業団が事業者となっています。
それぞれの事業に伴う責務は、各々の事業者に帰することになります。
○検討委員会は四国地方整備局が河川管理上の知見を得るために設置するものです。
河川管理者である四国地方整備局は、中予広域水道企業団が河川区域内に設置する構造物が、河川管理上妥当であるかどうかを客観的・科学的に判断いたします。その判断に際しての知見を得るため、検討委員会を設置することとしています。これにより取水施設を設置する中予広域水道企業団にとっても、速やかな審査が可能となり、また手戻りなどが生じない等のことが期待されます。
○中予広域水道企業団が検討されるものと理解しております。
中予分水事業で建設される取水施設の位置や構造は、事業者である中予広域水道企業団が検討し、計画されるものと理解しております。
なお、取水施設の検討に際して、四国地方整備局は必要な助言・協力を惜しむものではありません。
懸念6
肱川漁業協同組合が山鳥坂ダム建設・中予分水事業について反対表明をしており、取水施設や漁業権の問題と相まって計画の推進に支障をきたす可能性もあり、これが全体の事業費にも影響を及ぼす心配がある。 |
(実現性・コスト面) |
○個別の問題は、当事者間で話し合って理解を得る必要があります。
取水施設に関しては、中予分水事業実施を前提として、その事業者である中予広域水道企業団が自ら不安を解消できるような構造等を検討の上、関係者と話し合って理解を得る必要があります。
このご懸念に関しては見直し前の計画でも起こり得る問題であり、事業者の誠意ある対応により解消すべきものと思料します。
なお、構造検討等に際して、四国地方整備局は必要な助言・協力を惜しむものではありません。
|