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目 次
1.用語集の目的
2.水文観測全般(1)
2.水文観測全般(2)
3.雨量観測
4.水位観測
5.高水流量観測(1)
  5.高水流量観測(2)
  6.低水流量観測
  7.H-Q曲線
  8.資料整理
  9.痕跡調査
  10.参考文献

五十音順

2.水文観測全般 (1) ←前章 次章→

2.1.水文観測

 水文観測とは、広義には、地球上における水と物質の循環に関して、個々の過程を定量的に把握する手段であり、狭義には、降水量,河川水位,河川流量,河川水質,地下水位,地下水質,底質を定量的に観測することである。

【水文観測の目的】
 洪水による災害を未然に防止するためには、
  @降雨流出現象の解明
  A過去の水文データの統計解析にもとづいた合理的な河川構造物の設計
  B洪水予測技術
 が必要であり、水文・水質観測データはその基礎資料として不可欠である。
 また、人間の社会経済活動は、意図するしないにかかわらず、水文循環に大きな影響を与えている。例えば、都市化による大規模な土地被覆の改変や人工構造物は、自然の降雨流出形態を大きく変化させる。こうした影響を評価し、適切な対策を講じていくためにも、長期間に渡る定常的且つ継続した、水文観測データの蓄積と、その解析の重要性は高い。
 なお、「水文観測の手引き(案)導入編」における「目的」の項では、水文観測により取得された観測データの利用方法の概要を記述しているので参照されたい。
出典:水文観測(H14)P1

2.2.水文観測業務規程(法的根拠:国土調査法)

 国土調査法において、「国土調査」とは、「国の機関が行う基本調査,土地分類調査または水調査」と記述されている。この「水調査」とは、「治水及び利水に資する目的をもって、気象,陸水の流量,水質及び流砂状況並びに取水量,用水量,排水量,及び水利慣行等の水利に関する調査を行い、その結果を地図及び簿冊に作成することをいう。」と記述されている。この法的根拠にもとづき、「水文観測業務規程」が施行されている。
 「水文観測業務規程」は、水文観測を行う上での具体的な観測所の配置,観測方法,観測計画,報告及び観測成果の保管,指導及び監査,観測所の維持管理などに関して規程したものであり、水文観測関連業務を遂行する上で、「水文観測」及び「河川砂防技術基準」よりも上位に位置する基準である。
図:階層イメージ図
参考:水文観測業務規程関係集 P242

2.3.水文・水質データベース(水文・水質DB)

 国土交通省では、全国の主要河川において雨量及び水位,流量,水質等の観測を実施している。その成果は、河川等の計画立案,工事の実施及び管理等の基礎資料としてのみならず、国土調査等の基礎資料としても広く利用されている。
 これらの成果を体系化し、水文水質にかかわる国土交通省河川局が所管する各観測所における観測データの公開を目的として整備されたものが水文・水質データベースで、その対象は、雨量,水位,流量,水質,底質,地下水位,地下水質,積雪深,ダム堰等の管理諸量,海象である。
 ここに掲載されているデータには速報値と確定値があり、速報値は河川情報センター(FRICS)で公開している。
  【河川情報センターURL:http://www.river.or.jp/】    

写真:高知工事事務所所管 水文・水質DBシステム

写真:水文・水質DB メインメニュー画面

写真:水文・水質DB 作画画面

2.4.標準AQC −標準 Automatic Quality Check−

 AQCとは、水文・水質データベースにデータを登録した後、コンピューターを利用して自動的に登録データの品質チェックを行うためのシステムである。
 AQCでは、コンピューターにより登録データを自動的にチェックできるようにするため、各河川の気象,流域,地形特性に応じた評価基準(AQC定数)を設定(別途解析)しなければならない。また、AQCを行った後にMQCを行わなければならない。
 AQC定数は、不変でなく、定期的(5年〜10年程度)または極値が発生した時などは、更新(見直し)が必要である。四国地方整備局内では、平成10年度に各事務所でAQC定数を一斉に解析し設定している。
  ■ AQC定数の項目
   雨量観測のAQC定数には、「時間雨量上限値」,「日雨量上限値」がある。また、水位観測所のAQC定数には、「水位上限値」,「水位下限値」,「単位時間当りの許容上昇水位」,「単位時間当りの許容下降水位」,「同一水位許容継続時間」などがある。
  ■ AQC定数の解析の例
   AQC定数は、事前に定数解析により決定する必要がある。例えば、雨量観測のAQC定数である「時間雨量上限値」は、@過去の最大値を上限値,A確率論的な統計処理により導いた上限値,B近傍のアメダス観測所の確率降雨強度曲線式より設定した上限値などを解析し、これらを総合的に判断して決定する。
参考:水文・水質DB標準仕様書

2.5.標準MQC −標準 Manual Quality Check−

 MQCとは、水文技術者が「水文・水質データベース」を用いて、多角的に水文水質データの品質に関してを分析でき、手操作で品質チェックを行うための方法論である。
 MQCは、AQCにて観測データの異常が検出された場合に行う。AQCで異常が検出された場合、即時異常データと断定せず、その観測データについて十分チェックしてみる必要がある。これらの具体的な方法については、各河川ごとのMQCマニュアルに記載されているので参照されたい。
 水文観測技術は日々進歩しているため、MQCの手法についても定期的(5年〜10年程度)な見直しが必要である。
  ■ チェック方法の例
 
@ 雨量の場合
   雨量のチェック方法は、「近傍の雨量観測所との関係を比較する」、「気象庁雨量観測データとの関係を比較する」,「建設省レーダ雨量計の降雨分布布図と比較する」などが考えられる。
A 水位の場合
   水位のチェック方法は、「上下流の水位観測所観測データや施設放流量などとの関係を比較してみる」,「記録的に高い水位であれば、痕跡を調査したりセンサーを点検する」などが考えられる。
  ■ MQCの方法の例
  雨量観測のAQC定数である「時間雨量上限値」がAQCにて異常値となった場合のMQCの方法は、
@ 「関係機関の雨量情報の収集」,「データ補正の有無及び補正記録の照査」を行う。
A 隣接もしくは相関関係が高い観測所の観測データと比較する(これは、当該観測所と近傍観測所のハイエトグラフを「水文・水質データベース」にて作成し比較する)。
B 雨量観測所より下流で、なおかつ雨量観測所が設置されている流域の流出を表現可能な水位観測データもしくは流量データと比較する(これは、当該雨量観測所のハイエトグラフと下流の水位ハイドログラフを「水文・水質データベース」にて作成し比較する)。
参考:水文・水質DB標準仕様書

2.6.高度AQC

 高度AQC照査とは、各事務所で行う標準AQC,MQC(一次照査)後の水文データを受けて、整備局が行う照査(二次照査)である。単独の観測所の蓄積データについての統計解析による照査と、複数観測所のデータを用いて行う照査とからなる。主な内容は以下のとおりである。
 @近隣雨量の相関
 A総雨量の確認
 B上下流水位の相関
 C水位の急激な増減
 D水位ピークの発生の順序
 E流量ピークの発生順序
 F水位流量曲線の水理水文学的な妥当性の照査
参考:水文観測業務規程関係集 P210

2.7.高度MQC

 高度MQCとは、高度AQCで検出された、異常値の疑いのあるデータについて、長年に渡り水文観測に携わった経験と知識を有する照査者,照査機関による照査のことである。
参考:水文観測業務規程関係集 P210

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